介護施設・事業所における業務継続計画BCPガイドライン(厚労省発行2020/12)【全ページ掲載】
感染症や自然災害が発生した際、業務サービスを安定的・継続的に提供する為のガイドラインです。次の介護保険制度改正(令和3年)で業務継続計画(BCP)が事業者に必須になります。
以下、厚労省発行のガイドラインを掲載します。
介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン
【PDF版ダウンロード】ガイドライン
【全ページ画像掲載】ガイドライン
業務継続計画(BCP)とは
新型コロナウィルス感染症とは
新型コロナウィルス感染症BCPとは(自然災害BCPとの違い)
介護サービス事業者に求められる役割
BCP作成のポイント
感染(疑い)者発生時の対応等(入所系)
感染(疑い)者発生時の対応等(通所系)
感染(疑い)者発生時の対応等(訪問系)
【全文テキスト】ガイドライン
(以下は上記画像のテキスト版です)
目 次
1.はじめに
1-1.ガイドライン作成のねらい
1-2.ガイドラインの利用方法
2.BCPとは 2-1.業務継続計画(BCP)とは
2-2.新型コロナウイルス感染症とは
2-3.新型コロナウイルス感染症BCP とは(自然災害BCP との違い)
2-4.介護サービス事業者に求められる役割
3.新型コロナウイルス感染症BCP の作成、運用のポイント
3-1.BCP 作成のポイント
3-2.新型コロナウイルス感染(疑い)者発生時の対応等(入所系)
3-3.新型コロナウイルス感染(疑い)者発生時の対応等(通所系)
3-4.新型コロナウイルス感染(疑い)者発生時の対応等(訪問系)
3-5.感染防止に向けた取組(参考)
1-1.ガイドライン作成のねらい
介護サービスは、要介護者、家族等の生活を支える上で欠かせないものであり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言下などの制限下であっても、感染防止対策等の徹底を前提とした継続的なサービスの提供が求められています。そのためには、業務継続に向けた計画の作成が重要であるため、施設・事業所内で新型コロナウイルス感染症が発生した場合の対応、それらを踏まえて平時から準備・検討しておくべきことを、介護サービス類型に応じた業務継続ガイドラインとして整理しました。
なお、本ガイドラインは業務継続計画(BCP)作成に最低限必要な情報を整理したものであり、BCPは、作成後も継続的に検討・修正を繰り返すことで各施設・事業所の状況に即した内容へと発展させていただくことが望ましいです。
1-2.ガイドラインの利用方法
本ガイドラインの3-2、3-3、3-4において、新型コロナウイルス感染(疑い)者発生時の対応事項を詳細に記載しています。
これは、別途お示しする「新型コロナウイルス感染症発生時における業務継続計画」のひな形における「対応事項」に該当するものです。
BCP を作成する際には、「対応事項」の各項目について、本ガイドラインにおける記載を参考に、各施設・事業所における具体的な対応を検討し、記載いただくことを考えています。
また、BCP 作成にあたっての参考として、別添で以下の様式を添付しています(本文中の関連する部分に様式番号を記載しています)。
<添付(様式)ツール>
NO 様式名 備考
様式1 推進体制の構成メンバー 予め検討しておく。
様式2 施設・事業所外連絡リスト 予め検討しておく。
様式3 職員、入所者・利用者 体温・体調チェックリスト 感染疑い者発生時に使用。
様式4 感染(疑い)者・濃厚接触(疑い)者管理リスト 感染疑い者発生時に使用。
様式5 (部署ごと)職員緊急連絡網 予め検討しておく。
様式6 備蓄品リスト 予め検討しておく。
様式7 業務分類(優先業務の選定) 予め検討しておく。
(参考)様式 8 来所立ち入り時体温チェックリスト 平時対応に使用。
1.はじめに
2-1.業務継続計画(BCP)とは
BCP(ビー・シー・ピー)とはBusiness Continuity Plan の略称で、業務継続計画などと訳されます。
新型コロナウイルス等感染症や大地震などの災害が発生すると、通常通りに業務を実施することが困難になります。まず、業務を中断させないように準備するとともに、中断した場合でも優先業務を実施するため、あらかじめ検討した方策を計画書としてまとめておくことが重要です。
BCP の特徴として、災害等が発生した後に速やかに復旧させることが重要ですが、その前に「重要な事業を中断させない」という点が挙げられます。内閣府「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-平成25 年8月改定)」では、以下のとおり定義されています。
大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)と呼ぶ。
BCPにおいて重要な取組は、例えば、・各担当者を決めておくこと(誰が、何をするか)・連絡先を整理しておくこと・必要な物資を整理しておくこと・上記を組織で共有すること・定期的に見直し、必要に応じて研修・訓練を行うこと 等があげられます。
(参考:BCP といわゆる感染対策マニュアルに含まれる内容の違い(イメージ))
内容 BCP 感染対策マニュアル
平時の取組 ウイルスの特徴 △ ◎
感染予防対策
(手指消毒の方法、ガウンテクニック等)△ ◎
健康管理の方法 △ ◎
体制の整備・担当者の決定 ◎ △
連絡先の整理 ◎ △
研修・訓練 ◎ ○
備蓄 ◎ ○
感染(疑い)者発生時の対応
情報共有・情報発信 ◎ ○
感染拡大防止対策(消毒、ゾーニング方法等) △ ◎
ケアの方法 △ ◎
職員の確保 ◎ ○
業務の優先順位の整理 ◎ ×
労務管理 ◎ ×
※◎、○、△、×は違いをわかりやすくするための便宜上のものであり、各項目を含めなくてよいことを意味するものではありません。
2.BCPとは
2-2.新型コロナウイルス感染症とは
1 今般の新型コロナウイルス感染症では、症状がなくてもウイルスが検出される「無症状病原体保有者」の存在が明らかとなり、「無症状病原体保有者」からの感染の拡がりも指摘されました。
2 基本再生産数とは、すべての者が感受性を有する集団において1人の感染者が生み出した二次感染者数の平均値をいう。
3 病原体診断については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第3版(加藤康幸ら:2020 年9 月4 日)を参照ください。なお、当該診療の手引きについては、更新されていることがあるため、厚生労働省ホームページ:新型コロナウイルス感染症について>医療機関向け情報(治療ガイドライン、臨床研究など)を適宜ご確認ください。
多くの症例で発熱、呼吸器症状(咳、咽頭痛、鼻汁、鼻閉など)、頭痛、倦怠感など、インフルエンザや感冒に初期症状が類似している。また、嗅覚症状・味覚症状を訴える患者も多い。高齢者、基礎疾患(慢性呼吸器疾患、糖尿病、心血管疾患など)がハイリスク要因と考えられている。(図1)
環境中のウイルスの残存時間はエアロゾルでは3 時間程度、プラスチックやステンレスの表面では72 時間程度、段ボールの表面では24 時間程度、銅の表面では4時間程度とされる。クルーズ船の調査では、患者の枕、電話受話器、TV リモコン、椅子の取っ手、トイレ周辺環境でウイルスが多く付着していた。
インフルエンザの残存時間に比べると、新型コロナウイルスの方が長く環境に留まるため、消毒をしっかりと行うことが重要である。手洗いが重要だが、エアジェット式手指乾燥機は使用しないことが望ましいとされる。
病原体 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)
潜伏期間 主に約5 日程度(1~14 日)
感染経路・
感染期間
新型コロナウイルスへの感染は、ウイルスを含む飛沫が口、鼻や眼などの粘膜に触れることによって感染が起こる飛沫感染が主体と考えられるが、ウイルスがついた手指で口、鼻や眼の粘膜に触れることで起こる接触感染もあるとされる。また換気の悪い環境では、咳やくしゃみなどがなくても感染すると考えられている。このため、3密を避けることが重要となる。
有症者が感染伝播の主体であるが、発症前や、無症状病原体保有者1 からの感染リスクもあり、発症前後の時期に最も感染力が高いとの報告がされている。また、約半数は無症状病
原体保有者から感染するとの報告もあり、注意が必要である。
なお、血液、尿、便から感染性のある新型コロナウイルスを検出することはまれとされる。
エアロゾル感染
エアロゾル感染は厳密な定義がない状況にあるが、新型コロナウイルスは密閉された空間において、短距離でのエアロゾル感染を示唆する報告がある。
エアロゾル感染の流行への影響は明らかではない。患者病室などの空間から培養可能なウイルスが検出された報告がある一方、空気予防策なしに診療を行った医療従事者への二次感染がなかったとする報告もある。
また、基本再生産数2が2.5程度と、麻しんなど他のエアロゾル感染する疾患と比較して低いことなどから、現在の流行における主な感染経路であるとは評価されていない。医療機関では、少なくともエアロゾルを発生する処置が行われる場合には、空気予防策が推奨される。
症状・予後 初期症状はインフルエンザや感冒に似ており、多くの症例で発熱、呼吸器症状(咳、咽頭痛、鼻汁、鼻閉など)、頭痛、倦怠感などがみられる。また、嗅覚症状・味覚症状を訴える患者が多い。
重症化する場合、1週間以上、発熱や呼吸器症状が続き、息切れなど肺炎に関連した症状を認め、その後、呼吸不全が進行し、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症などを併発する例が見られる。重症化する例では、肺炎後の進行が早く、急激に状態が悪化する例が多いため、注意深い観察と迅速な対応が必要になる3。(図2)4
図1 重症化のリスク因子
図2 新型コロナウイルス感染症の経過
(出典:加藤康幸ら:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第3版、2020 年9 月4 日令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業一類感染症等の患者発生時に備えた臨床的対応に関する研究)
出典:介護現場における感染対策の手引き第1 版より引用治療 現時点の治療の基本は対症療法である。レムデシビル(エボラ出血熱の治療薬として開発。国内で初めて新型コロナウイルス感染症に対する治療薬として承認された)、重症例ではデキサメタゾン。抗血栓薬、抗凝固薬の効果も示唆されている。
予防法・ワクチン
開発中(治験が開始されている)
2-3.新型コロナウイルス感染症BCPとは(自然災害BCPとの違い)
新型コロナウイルス感染症と大地震をはじめとした自然災害では、被害の対象や期間などに違いが見られます(両者の主な相違は表1)。ここから導かれる重要な特徴は以下の3 点です。
① 情報を正確に入手し、その都度、的確に判断をしていくことが重要感染の流行影響は、不確実性が高く予測が困難です。それでも、職員、入所者・利用者への感染リスク、業務を継続する社会的責任、施設・事業所を運営していくための収入の確保などの観点を踏まえて業務継続レベルを判断していく必要があります。そのため、正確な情報を収集し、その都度的確に判断を下していくことが施設・事業者には求められます。
② 業務継続は、主にヒトのやりくりの問題
建物設備やインフラなどに甚大な被害を及ぼす自然災害と違い、新型コロナウイルス感染症ではヒトへの影響が大きくなります。そのため、感染拡大時の職員確保策をあらかじめ検討しておくことが重要です。
また、物流の混乱などの理由から感染予防に必要な物資の不足が起こり得ることから、平時から備蓄を進めておくことが必要です。
③ 感染防止策が重要
上述の通り、新型コロナウイルス感染症における業務継続はヒトのやりくりが中心的な問題になります。職員の確保策に加え、感染防止策についてもあらかじめ検討し、適切に実施しておくことが肝要です。
(表1)新型コロナウイルス等感染症と地震災害との違い(厚生労働省「事業者・職場における新型インフルエンザ等対策ガイドライン」に加筆)項目 地震災害 新型コロナウイルス感染症事業継続方針◎できる限り事業の継続・早期復旧を図る
◎サービス形態を変更して事業を継続
◎感染リスク、社会的責任、経営面を勘案し、事業継続のレベルを決める被害の対象◎主として、施設・設備等、社会インフラへの被害が大きい
◎主として、人への健康被害が大きい
地理的な影響範囲
◎被害が地域的・局所的
(代替施設での操業や取引事業者間の補完が可能)
◎被害が国内全域、全世界的となる
(代替施設での操業や取引事業者間の補完が不確実)被害の期間 ◎過去事例等からある程度の影響想定が可能
◎長期化すると考えられるが、不確実性が高く影響予測が困難被害発生と被害制御
◎主に兆候がなく突発する
◎被害量は事後の制御不可能
◎海外で発生した場合、国内発生までの間、準備が可能
◎被害量は感染防止策により左右される事業への影響
◎事業を復旧すれば業績回復が期待できる
◎集客施設等では長期間利用客等が減少し、業績悪化が懸念される感染防止策が重要事業継続は、主にヒトのやりくりの問題情報を正確に入手し、その都度、的確に判断をしていくことが必要
また、上述の違いを踏まえると、業務量の時間的推移も異なってきます(図3参照)。
自然災害が発生すると、インフラ停止などによる通常業務の休止や、避難誘導・安否確認などによる災害時業務の発生のため、通常の業務量が急減します。
一方、新型コロナウイルス感染症は国内で感染が拡大し始めると、自身が感染したり、濃厚接触者になる等により出勤できなくなる職員が出てきますが、通常業務が急減することはなく、むしろ感染対策等の業務が一時的に増加し、その後対応可能な業務量が徐々に減少していくものと想定されます。
そこで、新型コロナウイルス感染症BCP では、職員不足時においては健康・身体・生命を守る機能を優先的に維持しつつ、新型コロナウイルス感染症の感染者(感染疑いを含む)が施設・事業所内で発生した場合においても、サービス提供を継続させることが目的となります。
図3 災害と新型コロナウイルス感染者の発生後業務量の時間的経過に伴う変化
2-4.介護サービス事業者に求められる役割
■サービスの継続
介護事業者は、入所者・利用者の健康・身体・生命を守るための必要不可欠な責任を担っています。
したがって、入所施設や訪問事業所においては新型コロナウイルス感染症の感染拡大時にも業務を継続できるよう事前の準備を入念に進めることが必要です。また通所事業所においても極力業務を継続できるよう努めるとともに、万一業務の縮小や事業所の閉鎖を余儀なくされる場合でも、利用者への影響を極力抑えるよう事前の検討を進めることが肝要です。
■利用者の安全確保
介護保険のサービス利用者は、65 歳以上の高齢者及び40 歳以上の特定疾病のある方です。これらの方々は抵抗力が弱く、感染すると重症化するリスクが高まります。いったん集団感染が発生した場合、深刻な人的被害が生じる危険性があるため、利用者の安全確保に向けた感染防止策をあらかじめ検討しておき、確実に実行する必要があります。
■職員の安全確保
感染拡大時に業務継続を図ることは、職員の感染するリスクを高めるほか、長時間勤務や精神的打撃など職員の労働環境が過酷になることが懸念されます。したがって、労働契約法第5 条(使用者の安全配慮義務)の観点からも、職員の感染防止対策とあわせて、職員の過重労働やメンタルヘルス対応への適切な措置を講じることが使用者の責務となります。
労働契約法第5 条
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」
3-1.BCP作成のポイント
<1>施設・事業所内を含めた関係者との情報共有と役割分担、判断ができる体制の構築感染(疑い)者発生時の迅速な対応には、平時と緊急時の情報収集・共有体制や、情報伝達フロー等の構築がポイントとなります。そのためには、全体の意思決定者を決めておくこと、各業務の担当者を決めておくこと(誰が、何をするか)、関係者の連絡先、連絡フローの整理(次ページ参照)が重要です。
<2>感染(疑い)者が発生した場合の対応
介護サービスは、入所者・利用者の方々やその家族の生活を継続する上で欠かせないものであり、感染(疑い)者が発生した場合でも、入所者・利用者に対して必要な各種サービスが継続的に提供されることが重要です。そのため、感染(疑い)者発生時の対応について整理し、平時からシミュレーションを行うことが有用です。
<3>職員確保
新型コロナウイルス感染症では、職員が感染者や濃厚接触者となること等により職員が不足する場合があります。濃厚接触者とその他の入所者・利用者の介護等を行うに当たっては、可能な限り担当職員を分けることが望ましいですが、職員が不足した場合、こうした対応が困難となり交差感染のリスクが高まることから、適切なケアの提供だけではなく、感染対策の観点からも職員の確保は重要です。そのため、施設・事業所内・法人内における職員確保体制の検討、関係団体や都道府県等への早めの応援依頼を行うことが重要です。
<4>業務の優先順位の整理
職員が不足した場合は、感染防止対策を行いつつ、限られた職員でサービス提供を継続する必要があることも想定されます。そのため、可能な限り通常通りのサービス提供を行うことを念頭に、職員の出勤状況に応じて対応できるよう、業務の優先順位を整理しておくことが重要です。
<5>計画を実行できるよう普段からの周知・研修、訓練
BCP は、作成するだけでは実効性があるとは言えません。危機発生時においても迅速に行動が出来るよう、関係者に周知し、平時から研修、訓練(シミュレーション)を行う必要があります。また、最新の知見等を踏まえ、定期的に見直すことも重要です。
3.新型コロナウイルス感染症BCP の作成、運用のポイント
3-2.新型コロナウイルス感染(疑い)者発生時の対応等(入所系)
0.平時対応
(1)体制構築・整備(様式1)
全体の意思決定者、各業務の担当者(誰が、何をするか)を決めておき、関係者の連絡先、連絡フローの整理を行う。
(2)感染防止に向けた取組の実施
新型コロナウイルス感染症に関する最新情報(感染状況、政府や自治体の動向等)の収集、手指消毒・換気等の基本的な感染症対策の徹底、職員・入所者の体調管理、施設内出入り者の記録管理、人事異動・連絡先変更の反映を行う。(3-5.感染防止に向けた取組 参照)
(3)防護具、消毒液等備蓄品の確保
個人防護具、消毒剤等の在庫量・保管場所の確認を行う。感染が疑われる者への対応等により使用量が増加した場合に備え、普段から数日分は備蓄しておくことが望ましい。
(4)研修・訓練の実施
作成したBCP を関係者と共有し、平時からBCP の内容に関する研修、BCP の内容に沿った訓練(シミュレーション)を行う。
11
(5)BCP の検証・見直し
最新の動向や訓練等で洗い出された課題をBCP に反映させるなど、定期的に見直しを行う。
感染疑い者の発生
息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状や、発熱、咳、頭痛などの比較的軽い風邪症状等が確認された場合、速やかに新型コロナウイルス感染症を疑い対応する。
また、初期症状として、嗅覚障害や味覚障害を訴える患者がいることが明らかになっており、普段と違うと感じた場合には、速やかに医師等に相談する。
職員は、発熱等の症状が認められる場合には出勤を行わないことを徹底し、感染が疑われる場合は主治医や地域で身近な医療機関、受診・相談センター等に電話連絡し、指示を受けること。
初動対応
(1) 第一報(様式2)
<管理者へ報告>
感染疑い者が発生した場合は、速やかに管理者等に報告する。
管理者は施設内で情報共有を行うとともに、所属する法人の担当部署へ報告を行う。
<地域で身近な医療機関、受診・相談センターへ連絡>
協力医療機関や地域で身近な医療機関、あるいは、受診・相談センターへ電話連絡し、指示を受ける。
電話相談時は、施設入所者である旨や、症状・経過など、可能な限り詳細な情報を伝える。
<施設内・法人内の情報共有>
状況について施設内で共有する。
施設内においては、掲示板や社内イントラネット等の通信技術を活用し、施設内での感染拡大に注意する。
所属法人の担当窓口へ情報共有を行い、必要に応じて指示を仰ぐ。
<指定権者への報告>
電話により現時点での情報を報告・共有するとともに必要に応じて文書にて報告を行う。
<家族への報告>
状況について当該利用者家族へ情報共有を行う。その際、入所者の状態や症状の経過、受診・検査の実施等の今後の予定について共有するよう心がける。
【ポイント】
感染の疑いについてより早期に把握できるよう、管理者が中心となり、毎日の検温の実施、食事等の際における体調の確認を行うこと等により、日頃から入所者の健康の状態や変化の有無等に留意することが重要。
職員に関しては、管理者は、日頃から職員の健康管理に留意するとともに、職員が職場で体調不良を申出しやすい環境づくりに努めること。
【ポイント】
報告ルート、報告先、報告方法、連絡先等を事前に整理しておくことが重要。
(2) 感染疑い者への対応
<個室管理>
当該入所者について、個室に移動する。
個室管理ができない場合は、当該利用者にマスクの着用を求めた上で、「ベッドの感覚を2m 以上あける」または「ベッド間をカーテンで仕切る」等の対応を実施する。
<対応者の確認>
当該入所者とその他の入所者の介護等にあたっては、可能な限り、担当職員を分けて対応する。
この点を踏まえ、勤務体制の変更、職員確保について検討を行う。
<医療機関受診/施設内で検体採取>
第一報で連絡した医療機関、受診・相談センターの指示に従い、医療機関の受診等を行う。
保健所等の指示により、施設内で検査検体を採取することとなった場合は、検体採取が行われる場所について、以下の点も踏まえ保健所等に相談する。
-当該場所までの入所者の移動について、他の入所者と接触しないよう、可能な限り動線が分けられていること。
-検体を採取する場所は、十分な換気及び清掃、適切な消毒を行うこと。
<体調不良者の確認>
入所者の状況を集約し、感染疑い者の同室の者に発熱症状を有する者が多かったり、普段と違うと感じた場合は、施設内で感染が広がっていることを疑い、体調不良者の状況調査を行う。(様式3)職員についても体調不良者の確認を行い、体調不良の場合は地域で身近な医療機関、受診・相談センターへ連絡するとともに、一時帰宅を検討する。
(3) 消毒・清掃等の実施
<場所(居室、共用スペース等)、方法の確認>
当該入所者の居室、利用した共有スペースの消毒・清掃を行う。
手袋を着用し、消毒用エタノールで清拭する。または、次亜塩素酸ナトリウム液で清拭後、湿式清掃し、乾燥させる。なお、次亜塩素酸ナトリウム液を含む消毒薬の噴霧については、吸引すると有害であり、効果が不確実であることから行わないこと。トイレのドアノブや取手等は、消毒用エタノールで清拭する。または、次亜塩素酸ナトリウム液(0.05%)で清拭後、水拭きし、乾燥させる。保健所の指示がある場合は、その指示に従うこと。
検査
検査結果を待っている間は、陽性の場合に備え、感染拡大防止体制確立の準備を行う。
<陰性の場合>
入所を継続し、施設で経過観察を行う。
<陽性の場合>
入院にあたり、当該医療機関に対し、新型コロナウイルス感染状況(感染者であるか、濃厚接触者であるか)も含めた当該入所者の状況・症状等を可能な限り詳細に情報提供を行う。
現病、既往歴等についても、情報提供を行うとともに、主治医や嘱託医との情報共有に努める。
退院にあたっては、退院基準を満たし退院をした者について、新型コロナウイルス感染症の疑いがあるとして入所を断ることは、受入を拒否する正当な理由には該当しないことに留意し、受入準備を進める。なお、当該退院者の病状等その他の理由により適切なサービスを提供することが困難な場合は、個別に調整を行う。
(参考:検査について)
新型コロナウイルスは、鼻汁、唾液、痰の中などに多く存在するので、PCR 検査や抗原検査では、これらを採取して検査を行います。
PCR検査は、機械の中でウイルスの遺伝子を増幅させる反応を行い、もしウイルスがいれば、検査結果は陽性となります。抗原検査は、細かく分析できる定量検査と、細かい分析はできないながらも簡便に検査できる簡易検査に分かれます。
PCR 検査も抗原検査も、検査の精度は100%ではないので、きちんと検体が採取できても、例えば本来は陽性なのに誤って陰性と出てしまったり(偽陰性)、反対に本来は陰性なのに誤って陽性と出てしまうこと(偽陽性)
もあります。また、ウイルスがいる検体が適切に採取出来ていないと、それも本来は陽性なのに誤って陰性と出る原因になります。さらに、発症前の段階のウイルス量がまだ多くない時期に検査をすると陰性だったのに、後からウイルス量が増えたタイミングで検査をすると陽性になるということもあります。このため、検査結果は絶対的なものではなく、一度検査で陰性であったとしても、もし感染が疑われることがあれば、再度相談するようにしましょう。
感染拡大防止体制の確立
(1) 保健所との連携
<濃厚接触者の特定への協力>
感染者が発生した場合、保健所の指示に従い、濃厚接触者となる入所者等の特定に協力する。
症状出現2 日前からの接触者リスト、直近2 週間の勤務記録、利用者のケア記録(体温、症状等がわかるもの)、施設内に出入りした者の記録等を準備する。
感染が疑われる者が発生した段階で、感染が疑われる者、(感染が疑われる者との)濃厚接触が疑われる者のリストを作成することも有用。(様式4)
<感染対策の指示を仰ぐ>
消毒範囲、消毒内容、生活空間の区分け、運営を継続するために必要な対策に関する相談を行い、指示助言を受け、実施する。
行政検査対象者、検査実施方法について確認し、施設内での検体採取を行う場合は、実施場所について確認する。
感染者、濃厚接触者、その他の入所者がわかるよう、また、検査を受けた者とその検体採取日がわかるよう、職員及び入所者のリストを準備しておく。
<併設サービスの休業>
併設サービスについて、保健所から休業要請があればそれに従う。
感染者の人数、濃厚接触者の状況、勤務可能な職員の人数、消毒の状況等に応じて、休業を検討する指標を明確にしておく。
(2) 濃厚接触者への対応
【入所者】
<健康管理の徹底>
濃厚接触者については14 日間にわたり健康状態の観察を徹底する。
14 日間行うことが基本となるが、詳細な期間や対応については保健所の指示に従う。
<個室対応>
当該入所者については、原則として個室に移動する。
有症状となった場合は、速やかに別室に移動する。
個室が足りない場合は、症状のない濃厚接触者を同室とする。
個室管理ができない場合は、濃厚接触者にマスクの着用を求めた上で、「ベッドの間隔を2m 以上あける」または「ベッド間をカーテンで仕切る」等の対応を実施する。
<担当職員の選定>
当該入所者とその他の入所者の介護等に当たっては、可能な限り担当職員を分けて対応を行う。
職員のうち、基礎疾患を有する者及び妊婦等は、感染した際に重篤化するおそれが高いため、勤務上の配慮を行う。
<生活空間・動線の区分け>
「介護現場における感染対策の手引き 第1 版」等を参考に実施する(関連部分後述)。
<ケアの実施内容・実施方法の確認>
濃厚接触者のケアの実施内容・実施方法については、
・「介護現場における感染対策の手引き 第1 版」(第Ⅱ章 新型コロナウイルス感染症)
・「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について(その2)(一部改正)」(令和2 年10
月15 日付事務連絡)を参照。
(参考:「介護現場における感染対策の手引き 第1 版」より)
●ゾーニング*(区域をわける)
*清潔と不潔のエリアを明確にして区切ることで、不潔な区域から病原体を持ち出さないようすること。人や物の出入りを制限し、誰がみても「エリアが分かれている」ことがわかるようにすることが重要。
<介護職員の対応>
・感染症にかかった利用者がいるエリアと、そうでないエリアに分けて、感染が拡大しないようにします
・その際、各エリアを職員が行き来するのではなく、各エリアの受け持ちを決めます
・感染症にかかった利用者が入るエリアの中でも、動線が交差しないように人の動きに注意します
・感染症にかかった利用者が使用した物品等は、そのエリア内で廃棄や消毒ができるようにします
・可能であれば、職員更衣室での接触を避けるため、各エリアに更衣室を設定することが推奨されます
・エリアを越えた利用者の移動は行わないようにします
<利用者の対応>
・感染症にかかった利用者がエリアの外にでないようにします
・専用のトイレ(ポータブルトイレ)を設け、利用者の使用後には消毒を行います
・原則、家族等の面会も断ります
●コホーティング*(隔離)
*コホーティングとは、 感染患者をグループとしてまとめ、同じスタッフがケアにあたることで、施設内で周囲から区別・隔離すること。
<介護職員の対応>
・感染症にかかった利用者を個室管理にします。また、1か所の部屋に集めるなど、他の利用者へ感染が拡大しないようにします
・感染症にかかった利用者の部屋には、手袋やエプロンなど、標準予防策(スタンダード・プリコーション)が速やかに行えるように設置します
・入退室時には、手袋の着用の有無にかかわらず、手指衛生を行います
・退室する前に、手袋やエプロンを外し、感染性廃棄物に廃棄します
<利用者の対応>
・部屋の外に出ないようにします
・原則、 家族等の面会も断ります
【職 員】
<自宅待機>
保健所により濃厚接触者とされた職員については、自宅待機を行い、保健所の指示に従う。
職場復帰時期については、発熱等の症状の有無等も踏まえ、保健所の指示に従う。
(3) 職員の確保
<施設内での勤務調整、法人内での人員確保>(様式5)
感染者や濃厚接触者となること等により職員の不足が見込まれる。
勤務が可能な職員と休職が必要な職員の把握を行い、勤務調整を行う。また、基準等について、不測の事態の場合は指定権者へ相談した上で調整を行う。
勤務可能な職員への説明を行ったうえで、緊急やむを得ない対応として平時の業務以外の業務補助等への業務変更を行うなど、入所者の安全確保に努めるシフト管理を行う。(期間を限定した対応とする)施設内の職員数にまだ余裕があれば、業務シフトを変更して対応し、同一法人内からの支援も検討する。
勤務時の移動について、感染拡大に考慮し近隣の事業所からの人員の確保を行う。
特に看護職員等については、通常時より法人内において連携を図り緊急時の対応が可能な状況の確保に努める。
委託業者が対応困難となった場合も踏まえ、職員調整を行う。
応援職員に「してほしい業務」「説明すべきこと」を決めておく。
<自治体・関係団体への依頼>(様式2)
自施設、法人内の調整でも職員の不足が見込まれる場合、自治体や関係団体へ連絡し、応援職員を依頼する。
感染者発生時の施設運営やマネジメントについては、協力医療機関の助言等も踏まえつつ、保健所の指示を受け管理者が中心となって対応すべきものである。感染症対策に係る専門的知識も踏まえた運営やマネジメントを行う必要があるが、施設単独で行うには困難を伴うこともあり、その場合は早めに都道府県等に専門家の派遣を依頼する。
<滞在先の確保>
職員の負担軽減のため、必要に応じて近隣に宿泊施設を確保する。
(参考:職員確保について)
BCP において職員体制の確保は特に重要です。以下のようなケースも想定し、日頃からシミュレーションを実施することも有用です。
(ケース1)職員A さんは、症状が出た日に勤務しており、同僚3人(B さん、C さん、D さん)とともに休憩室で昼食をとっていました。また、休憩時間に別の同僚(E さん)とマスクなしで会話したことから、合計4人が濃厚接触者として14 日間の自宅待機になりました。職員体制をどのように確保しますか?
(ケース2)翌日、職員B さん、C さん、D さんが新型コロナウイルス陽性とわかりました。このため、B さん、C さん、D さんの濃厚接触者である職員5名(E さん、F さん、G さん、H さん、I さん)も自宅待機となりました。職員体制をどのように確保しますか?
【ポイント】
業務が回らなくなってからではなく、職員の不足が見込まれる場合は、早めに対応を考えることが重要。症状がある場合に、職員が無理して出勤することがないように、職場環境を整えることも必要。
夜勤帯は特に人員が不足しやすく、防護具の着用に特段注意を払う。
(4) 防護具、消毒液等の確保
<在庫量・必要量の確認>(様式6)
個人防護具、消毒剤等の在庫量・保管場所を確認する。
入所者の状況および濃厚接触者の人数から今後の個人防護具や消毒等の必要量の見通しをたて、物品の確保を図る。個人防護具の不足は、職員の不安へもつながるため、充分な量を確保する。
<調達先・調達方法の確認>(様式2)
通常の調達先から確保できない場合に備え、複数の業者と連携しておく。
自法人内で情報交換し、調達先・調達方法を検討する。
不足が見込まれる場合は自治体、事業者団体に相談する。
感染拡大により在庫量が減るスピードが速くなることや、依頼してから届くまで時間がかかる場合があることを考慮して、適時・適切に調達を依頼する。
(5) 情報共有(様式2)
時系列にまとめ、感染者の情報、感染者の症状、その時点で判明している濃厚接触者の人数や状況を報告共有する。
管轄内保健所や行政からの指示指導についても、関係者に共有する。
<施設内・法人内での情報共有>
職員の不安解消のためにも、定期的にミーティングを開く等により、施設内・法人内で情報共有を行う。
施設内での感染拡大を考慮し、社内イントラネット等の通信技術を活用し各自最新の情報を共有できるように努める。
感染者が確認された施設の所属法人は、当該施設へ必要な指示指導の連携を図るよう努める。
<入所者・家族との情報共有>
感染拡大防止のための施設の対応、入所者や家族に協力をお願いすること(隔離対応、面会制限等)について説明する。
家族に入所者の様子をこまめに伝えるよう心がける。
必要に応じて文書にて情報共有を行うことが望ましい。
<自治体(指定権者・保健所)との情報共有>
職員の不足、物資の不足、施設の今後の対応方針含め、早めの情報共有を行う。
<関係業者等との情報共有>
委託業者に感染者発生状況、感染対策状況等を説明し、対応可能な範囲を確認する。職員負担軽減のためにも、指定権者や保健所とも相談し、可能な限りの対応を依頼する。同業者が対応困難な場合を想定し、あらかじめ他の専門業者を把握しておくことが望ましい。
感染者や濃厚接触者となった職員の兼務先を把握している場合は、個人情報に留意しつつ必要に応じて情報共有を行う。
必要に応じて、個人情報に留意しつつ、居宅介護支援事業所等と相談し、地域で当該入所者が利用等している医療機関や他サービス事業者への情報共有に努める。
【ポイント】
感染者が発生した場合に、どこにどのような情報共有を行うか、日頃から整理しておくことが重要。
感染者が発生した場合、人員や物資をどのように確保するか、濃厚接触者やその他の入所者へどのようにケアを行うかなど、施設の対応方針について、事前に入所者、家族と共有しておくことが望ましい。
(6) 業務内容の調整
<提供サービスの検討(継続、変更、縮小、中止)>(様式7)
業務を重要度に応じて分類し、感染者・濃厚接触者の人数、出勤可能な職員数の動向等を踏まえ、提供可能なサービス、ケアの優先順位を検討し、業務の絞り込みや業務手順の変更を行う。
(※新型コロナウイルス感染症対応に関して、介護報酬、人員、施設・設備及び運営基準などについては、柔軟な取扱いが可能とされている。)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000045312/matome.html#0200
下表も参考に、優先業務を明確化し、職員の出勤状況を踏まえ事業の継続を行う。
サービスの範囲や内容について、保健所の指示があればそれに従う。
(参考:優先業務の考え方の例)
職員数 出勤率30% 出勤率50% 出勤率70% 出勤率90%
優先業務の基準 生命を守るため必要最低限食事、排泄中心、その他は減少・休止ほぼ通常、一部減少・休止ほぼ通常食事の回数 減少 減少 朝・昼・夕 ほぼ通常食事介助 必要な方に介助 必要な方に介助 必要な方に介助 ほぼ通常排泄介助 必要な方に介助 必要な方に介助 必要な方に介助 ほぼ通常入浴介助 清拭 一部清拭 一部清拭 ほぼ通常機能訓練等 休止 必要最低限 必要最低限 ほぼ通常医療的ケア 必要に応じて 必要に応じて 必要に応じて ほぼ通常洗濯 使い捨て対応 必要最低限 必要最低限 ほぼ通常シーツ交換 汚れた場合 順次、部分的に交換 順次、部分的に交換 ほぼ通常
(注)濃厚接触者に対しては、感染防止に留意した上でケア等を実施。
(7) 過重労働・メンタルヘルス対応
<労務管理>
勤務可能な職員をリストアップし、調整する。
職員の不足が見込まれる場合は、早めに応援職員の要請も検討し、可能な限り長時間労働を予防する。
勤務可能な従業員の中で、休日や一部の従業員への業務過多のような、偏った勤務とならないように配慮を行う。
施設の近隣において宿泊施設、宿泊場所の確保を考慮する。
<長時間労働対応>
連続した長時間労働を余儀なくされる場合、週1日は完全休みとする等、一定時間休めるようシフトを組む。
定期的に実際の勤務時間等を確認し、長時間労働とならないよう努める。
休憩時間や休憩場所の確保に配慮する。
<コミュニケーション>
日頃の声かけやコミュニケーションを大切にし、心の不調者が出ないように努める。
風評被害等の情報を把握し、職員の心のケアに努める。
<相談窓口>
施設内又は法人内に相談窓口を設置するなど、職員が相談可能な体制を整える。
自治体や保健所にある精神保健福祉センターなど、外部の専門機関にも相談できる体制を整えておく。
(8) 情報発信
<関係機関・地域・マスコミ等への説明・公表・取材対応>
法人内で公表のタイミング、範囲、内容、方法について事前に方針を決めておく。
公表内容については、入所者・家族・職員のプライバシーへの配慮が重要であることを踏まえた上で検討する。取材の場合は、誰が対応するかをあらかじめ決めておく。複数名で対応にあたる場合も、対応者によって発信する情報が異ならないよう留意する。入所者・家族・職員が、報道を見て初めてその事実を知ることがないように気をつける。発信すべき情報については遅滞なく発信し、真摯に対応する。
3-3.新型コロナウイルス感染(疑い)者発生時の対応等(通所系)
0.平時対応
(1)体制構築・整備(様式1)
全体の意思決定者、各業務の担当者(誰が、何をするか)を決めておき、関係者の連絡先、連絡フローの整理を行う。
(2)感染防止に向けた取組の実施
新型コロナウイルス感染症に関する最新情報(感染状況、政府や自治体の動向等)の収集、手指消毒・換気等の基本的な感染症対策の実施、職員・利用者の体調管理、事業所内出入り者の記録管理、人事異動・連絡先変更の反映を行う。(3-5.感染防止に向けた取組 参照)
(3)防護具、消毒液等備蓄品の確保
個人防護具、消毒剤等の在庫量・保管場所の確認を行う。感染が疑われる者への対応等により使用量が増加した場合に備え、普段から数日分は備蓄しておくことが望ましい。
(4)研修・訓練の実施
作成したBCP を関係者と共有し、平時からBCP の内容に関する研修、BCP の内容に沿った訓練(シミュレーション)を行う。
(5)BCP の検証・見直し
最新の動向や訓練等で洗い出された課題をBCP に反映させるなど、定期的に見直しを行う。
感染疑い者の発生
送迎に当たっては、送迎車に乗る前に、利用者・家族又は職員が利用者の体温を計測し、発熱が認められる場合には、利用を断る取扱いとする。
利用者に息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状や、発熱、咳、頭痛などの比較的軽い風邪症状等が確認された場合、速やかに新型コロナウイルス感染症を疑い対応する。
また、初期症状として、嗅覚障害や味覚障害を訴える患者がいることが明らかになっており、普段と違うと感じた場合には、速やかに医師等に相談する。
職員は、発熱等の症状が認められる場合には出勤を行わないことを徹底し、感染が疑われる場合は主治医や地域で身近な医療機関、受診・相談センター等に電話連絡し、指示を受けること。
初動対応
(1) 第一報(様式2)
<管理者へ報告>
感染疑い者が発生した場合は、速やかに管理者等に報告する。
<地域で身近な医療機関、受診・相談センターへ連絡>
主治医や地域で身近な医療機関、あるいは、受診・相談センターへ電話連絡し、指示を受ける。
電話相談時は、通所利用者である旨や、症状・経過など、可能な限り詳細な情報を伝える。
<事業所内・法人内の情報共有>
状況について事業所内で共有する。その際、他の利用者や職員に体調不良者がいないか確認する。(様式3)
<指定権者への報告>
指定権者に状況について電話で報告する。
<居宅介護支援事業所への報告>
当該利用者を担当する居宅介護支援事業所に情報提供を行い、必要となる代替サービスの確保・調整等、利用
者支援の観点で必要な対応がとられるよう努める。
また、当該利用者が利用している他サービス事業者への情報共有を依頼する。
早急に対応が必要な場合などは、当該利用者が利用している他サービス事業者への情報共有を速やかに行う。
電話等で直ちに報告するとともに、必要に応じて文書にて詳細を報告する。
<家族への報告>
状況ついて当該利用者家族へ報告する。その際、利用者の状態や症状の経過、受診・検査の実施等の今後の予定について共有するよう心がける。
【ポイント】
報告ルート、報告先、報告方法、連絡先等を事前に整理しておくことが重要。
(2) 感染疑い者への対応
【利用者】
<利用休止>
利用を断った利用者については、当該利用者を担当する居宅介護支援事業所に情報提供を行い、必要となる代替サービスの確保・調整等、利用者支援の観点で必要な対応がとられるよう努める。
<医療機関受診>
利用中の場合は、第一報で連絡した医療機関、受診・相談センターの指示に従い、医療機関のへ受診等を行う。
(3) 消毒、清掃等の実施
<場所(居室、共用スペース等)、方法の確認>
当該利用者の利用した共有スペースの消毒・清掃を行う。
手袋を着用し、消毒用エタノールで清拭する。または、次亜塩素酸ナトリウム液で清拭後、湿式清掃し、乾燥させる。なお、次亜塩素酸ナトリウム液を含む消毒薬の噴霧については、吸引すると有害であり、効果が不確実であることから行わないこと。トイレのドアノブや取手等は、消毒用エタノールで清拭する。または、次亜塩素酸ナトリウム液(0.05%)で清拭後、水拭きし、乾燥させる。保健所の指示がある場合は、その指示に従うこと。
検査
検査結果を待っている間は、陽性の場合に備え、休業の検討、感染拡大防止体制確立の準備を行う。
<陰性の場合>
利用を継続する。
<陽性の場合>
入院にあたり、当該医療機関に対し、新型コロナウイルス感染状況(感染者であるか、濃厚接触者であるか)も含めた当該利用者の状況・症状等を可能な限り詳細に情報提供を行う。
現病、既往歴等についても、情報提供を行うとともに、主治医や嘱託医との情報共有に努める。
(参考:検査について)
新型コロナウイルスは、鼻汁、唾液、痰の中などに多く存在するので、PCR 検査や抗原検査では、これらを採取して検査を行います。 PCR 検査は、機械の中でウイルスの遺伝子を増幅させる反応を行い、もしウイルスがいれば、検査結果は陽性となります。抗原検査は、細かく分析できる定量検査と、細かい分析はできないながらも簡便に検査できる簡易検査に分かれます。 PCR 検査も抗原検査も、検査の精度は100%ではないので、きちんと検体が採取できても、例えば本来は陽性なのに誤って陰性と出てしまったり(偽陰性)、反対に本来は陰性なのに誤って陽性と出てしまうこと(偽陽性)もあります。また、ウイルスがいる検体が適切に採取出来ていないと、それも本来は陽性なのに誤って陰性と出る原因になります。さらに、発症前の段階のウイルス量がまだ多くない時期に検査をすると陰性だったのに、後からウイルス量が増えたタイミングで検査をすると陽性になるということもあります。このため、検査結果は絶対的なものではなく、一度検査で陰性であったとしても、もし感染が疑われることがあれば、再度相談するようにしましょう。
休業の検討
<都道府県、保健所等と調整>
保健所から休業要請があればそれに従う。
感染者の人数、濃厚接触者の状況、勤務可能な職員の人数、消毒の状況等に応じて、休業を検討する指標を明確にしておく。
感染の疑いのある利用者が、少数でありPCR 検査等により陰性と判断されるまでの間については一時的に提供を休止する場合がある。
<訪問サービス等の実施検討>
利用者のニーズや対応可能な職員に応じて、訪問サービスの実施を検討する。
訪問サービスが必要な利用者の優先度、およびケアの内容を事前に検討しておくことが望ましい。
安否確認等、必要に応じ「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」を参照しサービス提供を行う。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000045312/matome.html#0200
<居宅介護支援事業所との調整>
業務停止日と業務再開日、休業中の対応(訪問サービスの提供の有無等)について居宅介護支援事業所に情報提供し、利用者の代替サービス確保に努める。
<利用者・家族への説明>
管轄保健所の指示、指導助言に従い業務停止日と業務再開日を提示する。
業務停止期間における事業所窓口等を明示、また、業務停止中の消毒等の情報や従業員の対応等について説明を行う。
出来る限り、文書により提示することが望ましい。
<再開基準の明確化>
保健所からの休業要請の場合は、再開の基準も併せて確認する。
停止期間中の事業所内における消毒等の環境整備や従業員の健康状態より、停止期間として定めた期間を経過した場合業務を再開する。
業務を再開するにあたっては、利用者及びその家族をはじめ、情報共有を行ってきた関係機関に再開となる旨を通知すること。
感染拡大防止体制の確立
(1) 保健所との連携
<濃厚接触者の特定への協力>
感染者が発生した場合、保健所の指示に従い、濃厚接触者となる利用者等の特定に協力する。
症状出現2 日前からの接触者リスト、直近2 週間の勤務記録、利用者のケア記録(体温、症状等がわかるもの)、事業所内に出入りした者の記録等を準備する。
感染が疑われる者が発生した段階で、感染が疑われる者、(感染が疑われる者との)濃厚接触が疑われる者のリストを作成することも有用。(様式4)
<感染対策の指示を仰ぐ>
消毒範囲、消毒内容、運営を継続(又は一時休業)するために必要な対策に関する相談を行い、指示助言を受け、実施する。
(2) 濃厚接触者への対応
【利用者】
<自宅待機>
自宅待機し保健所の指示に従う。
<居宅介護支援事業所との調整>
自宅待機中の生活に必要なサービスが提供されるよう、居宅介護支援事業所等と調整を行う
【職 員】
<自宅待機>
自宅待機を行い、保健所の指示に従う。
職場復帰時期については、発熱等の症状の有無等も踏まえ、保健所の指示に従う。
(3) 防護具、消毒液等の確保
<在庫量・必要量の確認>(様式6)
個人防護具、消毒剤等の在庫量・保管場所を確認する。
利用者の状況等から今後の個人防護具や消毒等の必要量の見通しをたて、物品の確保を図る。
個人防護具の不足は、職員の不安へもつながるため、充分な量を確保する。
<調達先・調達方法の確認>(様式2)
通常の調達先から確保できない場合に備え、複数の業者と連携しておく。
自法人内で情報交換し、調達先・調達方法を検討する。
不足が見込まれる場合は自治体、事業者団体に相談する。
感染拡大により在庫量が減るスピードが速くなることや、依頼してから届くまで時間がかかる場合があることを考慮して、適時・適切に調達を依頼する。
(4) 情報共有
<事業所内・法人内での情報共有、利用者・家族との情報共有、自治体(指定権者・保健所)との情報共有、関係業者等との情報共有>(様式2)
時系列にまとめ、感染者の情報、感染者の症状、その時点で判明している濃厚接触者の人数や状況を報告共有する。
管轄内保健所や行政からの指示指導についても、関係者に共有する。
利用者・職員の状況(感染者、濃厚接触者、勤務可能な職員数等)、休業の期間、休業中の対応、再開の目安等について、施設内・法人内で共有する。
事業所内での感染拡大を考慮し、社内イントラネット等の通信技術を活用し各自最新の情報を共有できるように努める。
感染者が確認された事業所の所属法人は、当該事業所へ必要な指示指導の連携を図るよう努める。
休業の有無、休業の期間、休業中の対応、再開の目安等について、利用者・家族、指定権者、保健所、居宅介護支援事業所、委託業者等と情報共有を行う。
感染者や濃厚接触者となった職員の兼務先を把握している場合は、個人情報に留意しつつ必要に応じて情報共有を行う。
必要に応じて、個人情報に留意しつつ、居宅介護支援事業所等と相談し、地域で当該利用者が利用等している医療機関や他サービス事業者への情報共有に努める。
(5) 過重労働・メンタルヘルス対応
<労務管理>
職員の感染状況等に応じて勤務可能な職員をリストアップし、調整する。
職員の不足が見込まれる場合は、早めに応援職員の要請も検討し、可能な限り長時間労働を予防する。
勤務可能な従業員の中で、休日や一部の従業員への業務過多のような、偏った勤務とならないように配慮を行う。
事業所の近隣において宿泊施設、宿泊場所の確保を考慮する。
<長時間労働対応>
連続した長時間労働を余儀なくされる場合、週1日は完全休みとする等、一定時間休めるようシフトを組む。
定期的に実際の勤務時間等を確認し、長時間労働とならないよう努める。
休憩時間や休憩場所の確保に配慮する。
<コミュニケーション>
日頃の声かけやコミュニケーションを大切にし、心の不調者が出ないように努める。
風評被害等の情報を把握し、職員の心のケアに努める。
<相談窓口>
事業所内又は法人内に相談窓口を設置するなど、職員が相談可能な体制を整える。
自治体や保健所にある精神保健福祉センターなど、外部の専門機関にも相談できる体制を整えておく。
(6) 情報発信
<関係機関・地域・マスコミ等への説明・公表・取材対応>
法人内で公表のタイミング、範囲、内容、方法について事前に方針を決めておく。
公表内容については、利用者・家族・職員のプライバシーへの配慮が重要であることを踏まえた上で検討する。取材の場合は、誰が対応するかをあらかじめ決めておく。複数名で対応にあたる場合も、対応者によって発信する情報が異ならないよう留意する。
利用者・家族・職員が、報道を見て初めてその事実を知ることがないように気をつける。発信すべき情報については遅滞なく発信し、真摯に対応する。
(利用者への再開支援について)
特に通所系サービスでは、新型コロナウイルス感染症への不安等から、利用者本人・家族の意向により、サービスの利用を一時的に停止する、いわゆる「利用控え」が起きる場合がある。そのような場合、利用者が本来必要とする介護サービスが行き届かなくなる可能性があることから、当該利用者に対し、
・ ケアマネジャーと連携し、定期的に利用者の健康状態・生活状況を確認する
・ 利用者の希望等、必要に応じて代替サービスの利用を検討するとともに、利用者本人・家族の感染不安等に寄り添いつつ、
・ これまで利用していた介護サービスは心身の状態を維持する上で不可欠であること
・ 事業所において徹底した感染防止対策を実施していること
等を説明する等により、介護サービスの利用再開に向けた利用者への働きかけを行うことが考えられる。
3-4.新型コロナウイルス感染(疑い)者発生時の対応等(訪問系)
0.平時対応
(1)体制構築・整備(様式1)
全体の意思決定者、各業務の担当者(誰が、何をするか)を決めておき、関係者の連絡先、連絡フローの整理を行う。
(2)感染防止に向けた取組の実施
新型コロナウイルス感染症に関する最新情報(感染状況、政府や自治体の動向等)の収集、手指消毒・換気等の基本的な感染症対策の実施、職員・利用者の体調管理、事業所内出入り者の記録管理、人事異動・連絡先
変更の反映を行う。(3-5.感染防止に向けた取組 参照)
(3)防護具、消毒液等備蓄品の確保
個人防護具、消毒剤等の在庫量・保管場所の確認を行う。感染が疑われる者への対応等により使用量が増加した場合に備え、普段から数日分は備蓄しておくことが望ましい。
(4)研修・訓練の実施
作成したBCP を関係者と共有し、平時からBCP の内容に関する研修、BCP の内容に沿った訓練(シミュレーション)を行う。
(5)BCP の検証・見直し
最新の動向や訓練等で洗い出された課題をBCP に反映させるなど、定期的に見直しを行う。
感染疑い者の発生
利用者に息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状や、発熱、咳、頭痛などの比較的軽い風邪症状等が確認された場合、速やかに新型コロナウイルス感染症を疑い対応する。
また、初期症状として、嗅覚障害や味覚障害を訴える患者がいることが明らかになっており、普段と違うと感じた場合には、速やかに医師等に相談する。
職員は、発熱等の症状が認められる場合には出勤を行わないことを徹底し、感染が疑われる場合は主治医や地域で身近な医療機関、受診・相談センター等に電話連絡し、指示を受けること。
初動対応
(1) 第一報(様式2)
<管理者へ報告>
感染疑い者が発生した場合は、速やかに管理者等に報告する。
<地域で身近な医療機関、受診・相談センターへ連絡>
主治医や地域で身近な医療機関、あるいは、受診・相談センターへ電話連絡、指示を受ける。
電話相談時は、訪問サービス利用者である旨や、症状・経過など、可能な限り詳細な情報を伝える
<事業所内・法人内の情報共有>
状況について事業所内で共有する。その際、他の利用者や職員に体調不良者がいないか確認する。(様式3)
<指定権者への報告>
状況について指定権者に電話で報告する。
<居宅介護支援事業所への報告>
状況について居宅介護支援事業所に報告し、サービスの必要性を再度検討する。
また、当該利用者が利用している他サービス事業者への情報共有を依頼する。
早急に対応が必要な場合などは、当該利用者が利用している他サービス事業者への情報共有を速やかに行う。
電話等で直ちに報告するとともに、必要に応じて文書にて詳細を報告する。
<家族への報告>
状況について利用者の家族へ報告する。
(2) 感染疑い者への対応
【利用者】
<サービス提供の検討>
居宅介護支援事業所等と連携し、サービスの必要性を再度検討の上、感染防止策を徹底した上でサービスの提供を継続する。
可能な限り担当職員を分けての対応や、最後に訪問する等の対応を行う。
【ポイント】
報告ルート、報告先、報告方法、連絡先等を
事前に整理しておくことが重要。
<医療機関受診>
第一報で連絡した医療機関、受診・相談センターの指示に従い、医療機関のへ受診等を行う。
検査
検査結果を待っている間は、陽性の場合に備え、感染拡大防止体制確立の準備を行う。
<陰性の場合>
利用を継続する。
<陽性の場合>
入院にあたり、当該医療機関に対し、新型コロナウイルス感染状況(感染者であるか、濃厚接触者であるか)も含めた当該利用者の状況・症状等を可能な限り詳細に情報提供を行う。
現病、既往歴等についても、情報提供を行うとともに、主治医や嘱託医との情報共有に努める。
(参考:検査について)
新型コロナウイルスは、鼻汁、唾液、痰の中などに多く存在するので、PCR 検査や抗原検査では、これらを採取して検査を行います。 PCR 検査は、機械の中でウイルスの遺伝子を増幅させる反応を行い、もしウイルスがいれば、検査結果は陽性となります。抗原検査は、細かく分析できる定量検査と、細かい分析はできないながらも簡便に検査できる簡易検査に分かれます。 PCR検査も抗原検査も、検査の精度は100%ではないので、きちんと検体が採取できても、例えば本来は陽性なのに誤って陰性と出てしまったり(偽陰性)、反対に本来は陰性なのに誤って陽性と出てしまうこと(偽陽性)もあります。また、ウイルスがいる検体が適切に採取出来ていないと、それも本来は陽性なのに誤って陰性と出る原因になります。さらに、発症前の段階のウイルス量がまだ多くない時期に検査をすると陰性だったのに、後からウイルス量が増えたタイミングで検査をすると陽性になるということもあります。このため、検査結果は絶対的なものではなく、一度検査で陰性であったとしても、もし感染が疑われることがあれば、再度相談するようにしましょう。
感染拡大防止体制の確立
(1) 保健所との連携
<濃厚接触者の特定への協力>
感染者が発生した場合、保健所の指示に従い、濃厚接触者となる利用者等の特定に協力する。
直近2 週間の勤務記録、利用者のケア記録(体温、症状等がわかるもの)等を準備する。
感染が疑われる者が発生した段階で、感染が疑われる者、(感染が疑われる者との)濃厚接触が疑われる者のリストを作成することも有用。(様式4)
<感染対策の指示を仰ぐ>
消毒範囲、消毒内容、運営を継続するために必要な対策に関する相談を行い、指示助言を受け、実施する。感染対策について指示を受け、実施する。
(2) 濃厚接触者への対応
【利用者】
居宅介護支援事業所等を通じて保健所とも相談し、生活に必要なサービスを確保、訪問介護等の必要性の再検討等を行う。
濃厚接触者のケアの実施内容・実施方法については、「介護現場における感染対策の手引き 第1 版」(第Ⅱ章新型コロナウイルス感染症)、「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について(その2)(一
部改正)」(令和2 年10 月15 日付事務連絡)を参照。
居宅において、職員の手洗い・うがい、換気を行う環境が整備され、利用者及びその家族がその環境整備について理解、協力を頂く。
担当となる職員への説明と理解を得たうえで、サービス内容の提供できる職員を選定する。
出来る限り、当該利用者へ対応する職員の数を制限するよう努める。
【職 員】
<自宅待機>
自宅待機を行い、保健所の指示に従う。
職場復帰時期については、発熱等の症状の有無等も踏まえ、保健所の指示に従う。
(3) 職員の確保
感染者、濃厚接触者となることで職員の不足が想定される。勤務可能な職員を確認するとともに、職員の不足が見込まれる場合は、法人内での調整、自治体や関係団体への要請を行う。(様式2、5)
(4) 防護具、消毒液等の確保
<在庫量・必要量の確認>(様式6)
個人防護具、消毒等の在庫量・保管場所を確認する。
利用者の状況等から今後の個人防護具や消毒等の必要量の見通しをたて、物品の確保を図る。
個人防護具の不足は、職員の不安へもつながるため、充分な量を確保する。
<調達先・調達方法の確認>(様式2)
通常の調達先から確保できない場合に備え、複数の業者と連携しておく。
自法人内で情報交換し、調達先・調達方法を検討する。
不足が見込まれる場合は自治体、事業者団体に相談する。
感染拡大により在庫量が減るスピードが速くなることや、依頼してから届くまで時間がかかる場合があることを考慮して、適時・適切に調達を依頼する。
(5) 情報共有
<事業所内・法人内での情報共有、利用者・家族との情報共有、自治体(指定権者・保健所)との情報共有、関係業者等との情報共有>(様式2)時系列にまとめ、感染者の情報、感染者の症状、その時点で判明している濃厚接触者の人数や状況を報告共有する。
管轄内保健所や行政からの指示指導についても、関係者に共有する。
事業所内での感染拡大を考慮し、社内イントラネット等の通信技術を活用し各自最新の情報を共有できるように努める。
感染者が確認された事業所の所属法人は、当該事業所へ必要な指示指導の連携を図るよう努める。
感染者や濃厚接触者となった職員の兼務先を把握している場合は、個人情報に留意しつつ必要に応じて情報共有を行う。
必要に応じて、個人情報に留意しつつ、居宅介護支援事業所等と相談し、地域で当該利用者が利用等している医療機関や他サービス事業者への情報共有に努める。
(6) 業務内容の調整
<提供サービスの検討(継続、変更)>(様式7)
居宅介護支援事業所や保健所とよく相談した上で、訪問時間を可能な限り短くする等、感染防止策に留意した上でサービス提供を行う。(※新型コロナウイルス感染症対応に関して、介護報酬、人員、施設・設備及び運営基準などについては、柔軟な取扱いが可能とされている。)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000045312/matome.html#0200
(7) 過重労働・メンタルヘルス対応
<労務管理>
職員の感染状況等に応じて勤務可能な職員をリストアップし、調整する。
職員の不足が見込まれる場合は、早めに応援職員の要請も検討し、可能な限り長時間労働を予防する。
勤務可能な従業員の中で、休日や一部の従業員への業務過多のような、偏った勤務とならないように配慮を行う。
事業所の近隣において宿泊施設、宿泊場所の確保を考慮する。
<長時間労働対応>
連続した長時間労働を余儀なくされる場合、週1日は完全休みとする等、一定時間休めるようシフトを組む。
定期的に実際の勤務時間等を確認し、長時間労働とならないよう努める。
休憩時間や休憩場所の確保に配慮する。
<コミュニケーション>
日頃の声かけやコミュニケーションを大切にし、心の不調者が出ないように努める。
風評被害等の情報を把握し、職員の心のケアに努める。
<相談窓口>
事業所内又は法人内に相談窓口を設置するなど、職員が相談可能な体制を整える。
自治体や保健所にある精神保健福祉センターなど、外部の専門機関にも相談できる体制を整えておく。
(8) 情報発信
<関係機関・地域・マスコミ等への説明・公表・取材対応>
法人内で公表のタイミング、範囲、内容、方法について事前に方針を決めておく。
公表内容については、利用者・家族・職員のプライバシーへの配慮が重要であることを踏まえた上で検討する。
取材の場合は、誰が対応するかをあらかじめ決めておく。複数名で対応にあたる場合も、対応者によって発信する情報が異ならないよう留意する。
利用者・家族・職員が、報道を見て初めてその事実を知ることがないように気をつける。発信すべき情報については遅滞なく発信し、真摯に対応する。
3-5.感染防止に向けた取組(参考)
・ 介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止については、ウイルスを「持ち込まない」、「広めない」ための取組が重要です。
・ このためには、手指消毒、マスク着用、定期的な換気といった基本的な感染予防策が極めて大切です。
・加えて、発熱等の症状が認められる場合に出勤を行わないことの徹底等、職員の方々の健康管理や、感染の疑いを早期に把握できるよう、利用者の方々の健康状態や変化の有無等に留意すること等の日々の取組も重要です。
・ 無症状でもウイルスを保有している職員が、施設・事業所にウイルスを持ち込んでしまう可能性もあり、可能な限りの対策を行った上で、もし体調が悪い時には速やかに相談できる環境を整えていくことが重要です。
・ また、感染者や濃厚接触者が発生したことを想定したシミュレーションを行っておくことも有用です。・ これらについて、以下の事務連絡等を参考に、日頃から感染症対応力向上を図ることが望まれます。
○令和2 年4 月7 日付事務連絡(同年10 月15 日付一部改正)社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について(その2)
https://www.mhlw.go.jp/content/000683520.pdf
○令和2年6月30 日付事務連絡
高齢者施設における新型コロナウイルス感染症発生に備えた対応等について
https://www.mhlw.go.jp/content/000645119.pdf
○令和2 年7 月31 日付事務連絡
(別添)高齢者施設における施設内感染対策のための自主点検実施要領
https://www.mhlw.go.jp/content/000657094.pdf
○令和2 年9 月30 日付事務連絡
高齢者施設における施設内感染対策のための自主点検について(その2)
https://www.mhlw.go.jp/content/000678401.pdf
○令和2 年10 月1 日付事務連絡
介護現場における感染対策の手引き(第1版)等について
https://www.mhlw.go.jp/content/000678650.pdf
厚生労働省 「介護サービス類型に応じた業務継続計画(BCP)作成支援業務一式」
検討委員会
委員名簿
< 委 員 > (敬称略・五十音順、◎:委員長)
江 澤 和 彦 公益社団法人日本医師会 常任理事
菊 池 俊 則 全国社会福祉法人経営者協議会 中央推薦協議員
社会福祉法人 若竹会 常務理事
種 岡 養 一 公益社団法人全国老人福祉施設協議会 災害対策委員会委員長
早 見 浩太郎 一般社団法人日本在宅介護協会(株式会社ツクイ)
介護保険制度委員会 委員
樋 口 丈 明 一般社団法人「民間事業者の質を高める」
全国介護事業者協議会 関東甲信越ブロック担当理事
◎ 本 田 茂 樹 信州大学 特任教授
ミネルヴァベリタス株式会社 顧問
山 野 雅 弘 公益社団法人全国老人保健施設協会 管理運営委員会副委員長
【ダウンロード/全ページ画像掲載】業務継続計画書(ひな型)
介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン
【ダウンロード】ガイドライン
【全ページ画像掲載】ガイドライン
ガイドライン作成のねらい
ガイドラインの利用方法
業務継続計画(BCP)とは
防災計画と自然災害BCPの違い
介護サービス事業者に求められる役割
BCP作成のポイント
自然災害BCPの全体像
自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(共通事項)
自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(通所サービス固有事項)
自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(訪問サービス固有事項)
自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(居宅介護支援サービス固有事項)
【全文テキスト】ガイドライン
(以下は上記画像のテキスト版です)
目 次
1.はじめに
1-1.ガイドライン作成のねらい
1-2.本書の対象(施設・事業所単位)
1-3.ガイドラインの利用方法
2.BCPの基礎知識
2-1.業務継続計画(BCP)とは
2-2.介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)について
2-3.防災計画と自然災害BCP の違い
2-4.介護サービス事業者に求められる役割
3.自然災害BCP の作成、運用のポイント
3-1.BCP 作成のポイント
3-2.自然災害BCP の全体像
3-2-1.自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(共通事項)
3-2-2.自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(通所サービス固有事項)
3-2-3.自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(訪問サービス固有事項)
3-2-4.自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(居宅介護支援サービス固有事項)
(参考:複合災害対策~新型コロナウイルス感染症流行下における自然災害発生時の対策の考え方~)
1-1.ガイドライン作成のねらい
介護サービスは、要介護者、家族等の生活を支える上で欠かせないものであり、昨今大規模な災害の発生がみられる中、介護施設・事業所において、災害発生時に適切な対応を行い、その後も利用者に必要なサービスを継続的に提供できる体制を構築することが重要です。本ガイドラインの目的は、大地震や水害等の自然災害に備え、介護サービスの業務継続のために平時から準備・検討しておくべきことや発生時の対応について、介護サービス類型に応じたガイドラインとして整理しました。なお、本ガイドラインはBCP 作成に最低限必要な情報を整理したものであり、BCP は、作成後も継続的に検討・修正を繰り返すことで、各施設・事業所の状況に即した内容へと発展させていただくことが望ましいです。
1-2.本書の対象(施設・事業所単位)
本ガイドラインは施設・事業所単位でBCP を作成することを前提としています。なお、複数の施設・事業所を持つ法人では、法人本部としてのBCP も別途作成することが望まれます。その際、法人本部のBCP と施設・事業所単位のBCP は連動していること、法人本部は各事業所と連携しながらBCP を作成すること、法人本部と施設・事業所や、施設・事業所間の物資や職員派遣等の支援体制についても記載することが望まれます。【参考】法人本部BCP と施設・事業所単位のBCP の関係なお、本BCP ガイドラインは、地震・水害を主な対象としていますが、風害・竜巻・落雷・雪害等の発生が想定される地域においては、これらの災害の種類によらず「災害が引き起こす事象(被害)」を想定し応用することで活用いただくよう、お願いします。
1.はじめに
1-3.ガイドラインの利用方法
本ガイドラインの3-2-1から3-2-4において、自然災害発生への対応事項を、詳細に記載しています。これは、別途お示しする自然災害発生時における業務継続計画のひな型に対応しています。BCP を作成する際には、ひな型の各項目について、本ガイドラインにおける記載を参考に、各施設・事業所における具体的な対応を検討し、記載いただくことを考えています。なお、新型コロナウイルス感染症流行下において自然災害が発生した場合、感染拡大防止に配慮しながら、初動対応や事業継続、復旧対応が求められます。そのような場合に特に留意すべき事項を巻末に記載していますので、別途公表されている「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」と合わせて参考にしてください。
2-1.業務継続計画(BCP)とは
BCP(ビー・シー・ピー)とはBusiness Continuity Plan の略称で、業務継続計画などと訳されます。新型コロナウイルス等感染症や大地震などの災害が発生すると、通常通りに業務を実施することが困難になります。まず、業務を中断させないように準備するとともに、中断した場合でも優先業務を実施するため、あらかじめ検討した方策を計画書としてまとめておくことが重要です。BCP の特徴として、災害等が発生した後に速やかに復旧させることが重要ですが、その前に「重要な事業を中断させない」という点が挙げられます。内閣府「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-平成25 年8月改定)」では、以下のとおり定義されています。大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)と呼ぶ。BCP において重要な取組は、例えば、・各担当者をあらかじめ決めておくこと(誰が、いつ、何をするか)・連絡先をあらかじめ整理しておくこと・必要な物資をあらかじめ整理、準備しておくこと・上記を組織で共有すること・定期的に見直し、必要に応じて研修・訓練を行うこと 等が挙げられます。
2-2.介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)についてBCP とは「平常時の対応」「緊急時の対応」の検討を通して、①事業活動レベルの落ち込みを小さくし、②復旧に要する時間を短くすることを目的に作成された計画書です。介護施設等では災害が発生した場合、一般に「建物設備の損壊」「社会インフラの停止」「災害時対応業務の発生による人手不足」などにより、利用者へのサービス提供が困難になると考えられています。一方、利用者の多くは日常生活・健康管理、さらには生命維持の大部分を介護施設等の提供するサービスに依存しており、サービス提供が困難になることは利用者の生活・健康・生命の支障に直結します。上記の理由から、他の業種よりも介護施設等はサービス提供の維持・継続の必要性が高く、BCP 作成など災害発生時の対応について準備することが求められます。
2.BCPの基礎知識
2-3.防災計画と自然災害BCP の違い防災計画を作成する主な目的は、「身体・生命の安全確保」と「物的被害の軽減」ですが、その目的は、BCP の主な目的の大前提となっています。つまり、BCP では、防災計画の目的に加えて、優先的に継続・復旧すべき重要業務を継続する、または、早期復旧することを目指しており、両方の計画には共通する部分もあり密接な関係にあります。防災計画と自然災害BCP の違い①つまり、従来の防災計画に、避難確保、介護事業の継続、地域貢献を加えて、総合的に考えてみることが重要です。防災計画と自然災害BCP の違い②出典:(一社)福祉防災コミュニティ協会作成を一部修正6
2-4.介護サービス事業者に求められる役割
■サービスの継続
介護事業者は、入所者・利用者の健康・身体・生命を守るための必要不可欠な責任を担っています。入所施設においては自然災害発生時にも業務を継続できるよう事前の準備を入念に進めることが必要です。入所施設は入所者に対して「生活の場」を提供しており、たとえ地震等で施設が被災したとしても、サービスの提供を中断することはできないと考え、被災時に最低限のサービスを提供し続けられるよう、自力でサービスを提供する場合と他へ避難する場合の双方について事前の検討や準備を進めることが必要となります。また、通所事業所や訪問事業所においても極力業務を継続できるよう努めるとともに、万一業務の縮小や事業所の閉鎖を余儀なくされる場合でも、利用者への影響を極力抑えるよう事前の検討を進めることが肝要です。
■利用者の安全確保
介護事業者は、体力が弱い高齢者等に対するサービス提供を行います。自然災害が発生した場合、深刻な人的被害が生じる危険性があるため、「利用者の安全を確保する」ことが最大の役割です。そのため、「利用者の安全を守るための対策」が何よりも重要となります。
■職員の安全確保
自然災害発生時や復旧において業務継続を図ることは、長時間勤務や精神的打撃など職員の労働環境が過酷にあることが懸念されます。したがって、労働契約法第5 条(使用者の安全配慮義務)の観点からも、職員の過重労働やメンタルヘルス対応への適切な措置を講じることが使用者の責務となります。労働契約法第5 条「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
■地域への貢献
介護事業者の社会福祉施設としての公共性を鑑みると、施設が無事であることを前提に、施設がもつ機能を活かして被災時に地域へ貢献することも重要な役割となります。
3-1.BCP 作成のポイント
<1>正確な情報集約と判断ができる体制を構築
災害発生時の迅速な対応には、平時と緊急時の情報収集・共有体制や、情報伝達フロー等の構築がポイントとなります。
そのためには、全体の意思決定者を決めておくこと、各業務の担当者を決めておくこと(誰が、何をするか)、関係者の連絡先、連絡フローの整理が重要です。
<2>自然災害対策を「事前の対策」と「被災時の対策」に分けて、同時にその対策を準備事前の対策(今何をしておくか)
・設備・機器・什器の耐震固定
・インフラが停止した場合のバックアップ
被災時の対策(どう行動するか)
・人命安全のルール策定と徹底
・事業復旧に向けたルール策定と徹底
・初動対応
①利用者・職員の安否確認、安全確保
②建物・設備の被害点検
③職員の参集
<3>業務の優先順位の整理
施設・事業所や職員の被災状況によっては、限られた職員・設備でサービス提供を継続する必要があることも想定されます。
そのため、可能な限り通常通りのサービス提供を行うことを念頭に、職員の出勤状況、被災状況に応じて対応できるよう、業務の優先順位を整理しておくことが重要です
<4>計画を実行できるよう普段からの周知・研修、訓練
BCP は、作成するだけでは実効性があるとは言えません。危機発生時においても迅速に行動が出来るよう、関係者に周知し、平時から研修、訓練(シミュレーション)を行う必要があります。また、最新の知見等を踏まえ、定期的に見直すことも重要です。
3.自然災害BCPの作成、運用のポイント
3-2.自然災害BCP の全体像
3-2-1.自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(共通事項)
1.総論
(1)基本方針
施設、事業所としての災害対策に関する基本方針を記載する。
・ 災害において施設・事業所が果たすべき役割を鑑みて検討する。基本方針は優先する事業の選定や地域貢献その他さまざまな項目を検討する際の原点となるので、何のためにBCP 作成に取り組むのか、その目的を検討して記載する。
例)1.入所者・利用者の安全確保
2.サービスの継続
3.職員の安全確保
・ 一般的には、3 日間を乗り切ることが出来れば、外部からの何らかの支援を受ける事が出来ると想定され、『3 日間の初動対応が重要』となる。
(2)推進体制
平常時の災害対策の推進体制を記載する。
・ 災害対策は一過性のものではなく、継続して取り組む必要がある。また災害対策の推進には、総務部などの一部門で進めるのではなく、多くの部門が関与することが効果的であるため、継続的かつ効果的に取組を進めるために推進体制を構築する。
・ 被災した場合の対応体制は「3.緊急時の対応」の項目に記載する。ここでは平常時における災害対策や事業継続の検討・策定や各種取組を推進する体制を記載する。
・ 各施設・事業所の実情に即して、既存の検討組織を有効活用する。
(3)リスクの把握
①ハザードマップなどの確認
・ 施設・事業所が所在する自治体のハザードマップ等を貼り付ける(多い場合は別紙とする)。
・ 地震、津波、風水害など災害リスクの頻度や影響度は施設・事業所の立地によるところが大きい。自治体などが公表するハザードマップなどを確認し、これら災害リスクを把握したうえで施設に応じた対策を検討することが有効である。
・ 下記は震度分布図であるが、この他にも津波や浸水深想定、液状化の想定など様々なハザードマップが提供されており、一通り確認して添付しておくことが有用である。
ハザードマップ類は見直しが行われることがあるので、定期的に確認し変更されていれば差し替えることも必要である。
(例)
(出典)令和元年度社会福祉推進事業「社会福祉施設等におけるBCP の有用性に関する調査研究事業」
②被災想定
・ 自治体から公表されているインフラ等の被災想定を整理する。これらの被災想定から自施設の設備等を勘案して時系列で影響を想定することも有用である。これにより被災時における自施設の状況が見える化でき、各種対策を検討していく上での土台となる。
(記載例)
<自施設で想定される影響(例)>当日 2 日目 3 日目 4 日目 5 日目 6 日目 7 日目 8 日目 9 日目(電力)
自家発電機 → 復旧 → → → → → →電力EV飲料水生活用水ガス携帯電話メール
(4)優先業務の選定
①優先する事業
複数の事業を運営する施設・事業所では、どの事業(入所、通所、訪問等)を優先するか(どの事業を縮小・休止するか)を法人本部とも連携して決めておく。
・ 限られた状況下ではすべての事業を継続することが困難なため、優先して継続・復旧すべき事業を決めておく。各法人の中核をなす事業、入所施設など24 時間365 日サービスを休止することができない事業が優先されると考えられる。
・ 単一事業のみを運営している場合、本項目は割愛する。
②優先する業務
上記の優先する事業のうち、優先する業務を選定する。
・ 被災時に限られた資源を有効に活用するために、優先する事業からさらに踏み込み、優先する業務について選定しておく。優先業務の洗い出しとともに最低限必要な人数についても検討しておくと有用である。たとえ災害時であっても、生命を維持するための業務は休止できないことに留意する。
(5)研修・訓練の実施、BCP の検証・見直し
①研修・訓練の実施
・ 作成したBCP を関係者と共有し、平時からBCP の内容に関する研修、BCP の内容に沿った訓練(シミュレーション)
を行う。
②BCP の検証・見直し
・ 最新の動向や訓練等で洗い出された課題をBCP に反映させるなど、定期的に見直しを行う。
2.平常時の対応
(1)建物・設備の安全対策
①人が常駐する場所の耐震措置
建築年を確認し、新耐震基準が制定された1981(昭和56)年以前の建物は耐震補強を検討する。
(記載例)
場所 対応策 備考
建物(柱) 柱の補強/X型補強材の設置 旧耐震基準設計のもの
建物(壁) 柱の補強/X型補強材の設置 旧耐震基準設計のもの
パソコン 耐震キャビネット(固定)の採用
キャビネット ボルトなどによる固定
本棚 ボルトなどによる固定
金庫 ボルトなどによる固定
②設備の耐震措置
居室・共有スペース・事務所など、職員、入所者・利用者が利用するスペースでは、設備・什器類に転倒・転落・破損等の防止措置を講じる。
不安定に物品を積み上げず、日ごろから整理整頓を行い、転落を防ぐ。
破損して飛散した場合に特に留意が必要な箇所(ガラス天井など)や避難経路には飛散防止フィルムなどの措置を講じる。
消火器等の設備点検及び収納場所の確認を行う。
③水害対策
以下の例を参考に確認を行う。
(水害対策のチェック例)対象 対応策 備考浸水による危険性の確認 毎月1 日に設備担当による点検を実施。年1 回は業者による総合点検を実施。外壁にひび割れ、欠損、膨らみはないか 同上開口部の防水扉が正常に開閉できるか 故障したまま 4 月までに業者に修理依頼暴風による危険性の確認 特に対応せず 3 月までに一斉点検実施外壁の留め金具に錆や緩みはないか屋根材や留め金具にひびや錆はないか窓ガラスに飛散防止フィルムを貼付しているかシャッターの二面化を実施しているか周囲に倒れそうな樹木や飛散しそうな物はないか
(2)電気が止まった場合の対策
①自家発電機が設置されていない場合
電気なしでも使える代替品(乾電池や手動で稼働するもの)の準備や業務の方策を検討。
自動車のバッテリーや電気自動車の電源を活用することも有用である。
②自家発電機が設置されている場合
自家発電機を稼働できるよう、予め自家発電機の設置場所・稼働方法を確認しておく。
自家発電機のカバー時間・範囲を確認し、使用する設備を決めた上で優先順位をつける。
(例.最優先:医療機器・情報収集、優先:照明・空調)
(記載例)
稼働させるべき設備 自家発電機または代替策
医療機器:喀痰吸引、人工呼吸器など 自家発電機:
400Kw x 8 時間使用可能。燃料は●●。
乾電池:単三●本、単四●本
情報機器:パソコン、テレビ、インターネットなど
冷蔵庫・冷凍庫 夏場は暑さ対策として保冷剤等を用意
照明器具、冷暖房器具
(3)ガスが止まった場合の対策
都市ガスが停止した場合は復旧まで長期間(1 か月以上)要する可能性がある。
カセットコンロは火力が弱く、大量の調理は難しい。それらを考慮して備蓄を整備することが必要である。
プロパンガス、五徳コンロなどでの代替も考えられる。
(記載例)
稼働させるべき設備 代替策
暖房機器 湯たんぽ、毛布、使い捨てカイロ、灯油ストーブ
調理器具 カセットコンロ、ホットプレート
給湯設備 入浴は中止し、清拭
(4)水道が止まった場合の対策
「飲料水」「生活用水」に分けて、それぞれ「確保策」「削減策」を記載する。
①飲料水
飲料水用のペットボトルなどは、当面の運搬の手間を省くため、入所者・利用者の状況によっては、あらかじめ居室に配布するなど工夫することも一案である。なお、一般成人が1 日に必要とする飲料水は1.5~3.0 リットル程度である。
飲料水の備蓄では、消費期限までに買い換えるなど定期的なメンテナンスが必要。
②生活用水
生活用水の多くは「トイレ」「食事」「入浴」で利用され、対策は「水を使わない代替手段の準備」が基本。
「トイレ」であれば簡易トイレやオムツの使用、「食事」であれば紙皿・紙コップの使用などが代表的な手段である。
「入浴」は優先業務から外すことで、生活用水の節約にもつながる。給水車から給水を受けられるよう、ポリタンクなど十分な大きさの器を準備しておくことも重要である。また、浴槽は損傷がなければ生活用水のタンクとして活用可能である。
井戸水の活用も有効。(間違っても飲用しないこと)
(5)通信が麻痺した場合の対策
被災時に施設内で実際に使用できる方法(携帯メール)などについて、使用可能台数、バッテリー容量や使用方法等を記載する。(携帯電話/携帯メール/PHS/PCメール/SNS等)被災時は固定電話や携帯電話が使用できなくなる可能性があるため、複数の連絡手段で関係機関と連絡が取れるように準備しておく。整備した緊急連絡網はいざという時に活用できるよう、定期的にメンテナンスを行う。被災地では電話がつながりにくくなるため、同じ被災地域にいる人同士が連絡を取ろうとしても、連絡が取りづらくなることがある。そういった際には、例えば遠方の交流のある施設などを中継点とし、職員・施設が互いに連絡を入れるなど、安否情報や伝言などを離れた地域にいるところに預け、そこに情報が集まるようにしておく(三角連絡法)。
<各種通信手段の概要>
・衛星電話
人工衛星を利用した電話で、衛星に直接アクセスして通話するため、地上の通信設備の故障もしくは輻輳の影響を受けない。一般回線の電話にも架電可能。ただし、使用にあたっては事前に練習するなど習熟しておくことが必要である。また、使用可能時間を事前に確認しておくこと。・MCA無線(MCA=マルチチャンネルアクセス)携帯電話とは異なる周波数を活用する広域無線で、使用に資格は不要。限られたユーザーだけが使用するため、輻輳の可能性は低いと言われている。ただし、1回あたりの通話時間が3分と設定されている、通信可能範囲が日本全国をカバーしているわけではない等の特徴があるので、導入にあたっては、使用用途や通信可能範囲等を確認することが必要。
・災害時優先電話
災害時に被災地域から発信規制がかけられない電話で、輻輳の可能性が低いもの。利用にあたっては、電気通信事業者へ事前の申し込みが必要で、対象は原則として電気通信事業法で定める指定機関に限られる。(6)システムが停止した場合の対策電力供給停止などによりサーバ等がダウンした場合の対策を記載する(手書きによる事務処理方法など)。浸水リスクが想定される場合はサーバの設置場所を検討する。データ類の喪失に備えて、バックアップ等の方策を記載する。PC、サーバ、重要書類などは、浸水のおそれのない場所に保管されているか(上階への保管、分散保管など)。BCPそのものも重要書類として保管する必要がある。PC、サーバのデータは、定期的にバックアップをとっているか。いざという時に持ち出す重要書類は決まっているか など。
(7)衛生面(トイレ等)の対策
被災時は、汚水・下水が流せなくなる可能性があるため、衛生面に配慮し、トイレ・汚物対策を記載する。
①トイレ対策
「利用者」「職員」双方のトイレ対策を検討しておく。
【利用者】
電気・水道が止まった場合、速やかに簡易トイレを所定の箇所に設置し、そちらを使用するよう案内をする。
(周知が遅れると、汚物があふれて処理業務が発生するため)。
排泄物や使用済みのオムツなどを衛生面に配慮し、一時的に保管する場所を決めておく。
消臭固化剤を汚物に使用すると、「燃えるごみ」として処理が可能。
【職員】
職員のトイレ対策としては、簡易トイレ、仮設トイレなどを検討する。
女性職員のために、生理用品などを備蓄しておくことも必要。
②汚物対策
排泄物や使用済みのオムツなどの汚物の処理方法を記載する。排泄物などは、ビニール袋などに入れて密閉し、利用者の出入りの無い空間へ、衛生面に留意して隔離、保管しておく。敷地内に埋めるのは、穴掘り業務や後に消毒する必要が生じるため、留意する。
(8)必要品の備蓄
被災時に必要な備品はリストに整理し、計画的に備蓄する(多ければ別紙とし添付する)。定期的にリストの見直しを実施する。備蓄品によっては、賞味期限や使用期限があるため、メンテナンス担当者を決め、定期的に買い替えるなどのメンテナンスを実施する。
①在庫量、必要量の確認
行政支援開始の目安である被災後3 日目まで、自力で業務継続するため備蓄を行う。
準備した備蓄品はリスト化し、賞味期限や使用期限のあるものを中心に担当者を決めて、定期的にメンテナンスを行う。
<参考:備蓄品リスト例>
食料品:米(無洗米)、飲料水、缶詰、経管栄養食、高カロリー食、インスタント食品、栄養ドリンク など看護、衛生用品:消毒剤、脱脂綿、絆創膏、包帯、三角巾、おむつ、マスク、ウェットティッシュ、生理用品、タオルなど
日用品:紙容器(食器)、ラップ、カセットコンロ、電池、使い捨てカイロ など
災害用備品:ブルーシート、ポリ袋、ポリタンク(給水受け用) など
<参考:備蓄数量の考え方>
水 :1人1日3㍑、3日で9㍑
食料:1人1日3食、3日で9食
毛布:1人1枚
1人当たりの数量に日数を掛け合わせると備蓄数量の目安となる。
※新型コロナウイルス感染症下における対応として、感染対策に係る資材、防護具等(マスク、体温計、ゴム手袋(使い捨て)、フェイスシールド、ゴーグル、使い捨て袖付きエプロン、ガウン、キャップ等)についても在庫量・必要量の管理
を行い、数日分の備蓄を行うことが望ましい。
(9)資金手当て
災害に備えた資金手当て(火災保険など)を記載する。緊急時に備えた手元資金等(現金)を記載する。
地震保険については、事業用物件への保険契約を制限する傾向にあり、地域によっては地震保険を付けられないケースもあるので注意する。
現在加入の火災保険で水害について補償できるか確認すること。もしカバーできなければ立地などを踏まえて見直しを検討する。
17
(出典)令和元年度社会福祉推進事業「社会福祉施設等におけるBCP の有用性に関する調査研究事業」
(提供)社会福祉法人 若竹会 非常災害等対策計画
3.緊急時の対応
(1)BCP 発動基準
地震の場合、水害の場合等に分けてBCP を発動する基準を記載する。
発災時には、安否確認・応急救護など、通常時には行う必要のない特殊な「災害時業務」が発生する。特殊な災害時業務に対応するため、あらかじめ役割と組織を決め、訓練等を行ってその有効性を確認しておく。
また、統括責任者が不在の場合の代替者も決めておく。
(記載例)
【地震】
本書に定める緊急時体制は、●●市周辺において、震度●以上の地震が発生し、被災状況や社会的混乱などを総合的に勘案し、施設長が必要と判断した場合、施設長の指示によりBCP を発動し、対策本部を設置する。
【水害】
・大雨警報(土砂災害)、洪水警戒が発表されたとき。
・台風により高潮注意報が発表されたとき。
(2)行動基準
発生時の個人の行動基準を記載する。
行動基準は安否確認方法、参集基準、各種連絡先等の必要な事項を『携帯カード』に整理して、職員に携帯させるよう運営すると効果的である。
(3)対応体制対応体制や各班の役割を図示する。代替者を含めたメンバーを検討し、記載する。対応体制や各班の役割を図示すると分かりやすい。代替者を含めて班長、メンバーを検討し、あわせて記載する。復旧後に活動を振り返るために活動記録をとることも重要であり、役割に入れることを推奨する。(記載例では「情報班」がその役割を担う。)(記載例)【地震防災活動隊】隊長=施設長 地震災害応急対策の実施全般について一切の指揮を行う。【情報班】行政と連絡をとり、正確な情報の入手に努めるとともに適切な指示を仰ぎ、隊長に報告するとともに、利用者家族へ利用者の状況を連絡する。活動記録をとる。班長:・・・・ メンバー:・・・・【消火班】地震発生直後直ちに火元の点検、ガス漏れの有無の確認などを行い、発火の防止に万全を期すとともに、発火の際には消火に努める。班長:・・・・ メンバー:・・・・【応急物資班】食料、飲料水などの確保に努めるとともに、炊きだしや飲料水の配布を行う。班長:・・・・ メンバー:・・・・【安全指導班】利用者の安全確認、施設設備の損傷を確認し報告する。隊長の指示がある場合は利用者の避難誘導を行う。家族への引継ぎを行う。班長:・・・・ メンバー:・・・・【救護班】負傷者の救出、応急手当および病院などへの搬送を行う。班長:・・・・ メンバー:・・・・【地域班】地域住民や近隣の福祉施設と共同した救護活動、ボランティア受け入れ体制の整備・対応を行う。班長:・・・・ メンバー:・・・・(4)対応拠点緊急時対応体制の拠点となる候補場所を記載する(安全かつ機能性の高い場所に設置する)。津波で浸水する恐れがある等、被災想定によっては、施設・事業所以外の場所での設置も検討する。
(5)安否確認
①利用者の安否確認
利用者の安否確認方法を検討し、整理しておく(別紙で確認シートを作成)。なお、負傷者がいる場合には応急処置を行い、必要な場合は速やかに医療機関へ搬送できるよう方法を記載する。
利用者の安否確認が速やかに行われるよう担当を決めておく。
速やか安否確認結果を記録できるよう安否確認シートを準備しておくとよい。
<利用者の安否確認シート例>
利用者氏名 安否確認 容態・状況無事・死亡 ・負傷・不明無事・死亡 ・負傷・不明無事・死亡 ・負傷・不明
②職員の安否確認
職員の安否確認方法を複数検討し準備しておく(別紙で確認シートを作成)。
フロア・ユニット毎などで安否確認を行い、報告ルール・ルートを明確にしておく。
非番職員には、緊急連絡網の災害時連絡先に自主的に安否報告をさせる。
その他「NTT 災害用伝言ダイヤル」や「Web171」の活用も検討しておくとよい。なお、蓄積件数や保存期間は無制限ではない。利用方法など事前確認しておくとよい。
速やかに安否確認結果を記録できるよう安否確認シートを準備しておくとよい。
(記載例)
【施設内】
・職員の安否確認は、利用者の安否確認とあわせて各エリアでエリアリーダーが点呼を行い、施設長に報告する。
【自宅等】
・自宅等で被災した場合(自地域で震度5強以上)は、①電話、②携帯メール、③災害用伝言ダイヤルで、施設に自身の安否情報を報告する。
・報告する事項は、自身・家族が無事かどうか、出勤可否を確認する。
<職員の安否確認シート例>
職員氏名 安否確認 自宅の状況 家族の安否 出勤可否無事 ・ 死亡負傷 ・ 不明全壊 ・ 半壊問題無し無事 ・ 死傷有備考( )可能 ・ 不可能備考( )無事 ・ 死亡負傷 ・ 不明全壊 ・ 半壊問題無し無事 ・ 死傷有備考( )可能 ・ 不可能備考( )無事 ・ 死亡負傷 ・ 不明全壊 ・ 半壊問題無し無事 ・ 死傷有備考( )可能 ・ 不可能備考( )
(6)職員の参集基準
発災時の職員の参集基準を記載する。なお、自宅が被災した場合など参集しなくてもよい場合についても検討し、記載することが望ましい。災害時は通信網の麻痺などにより、施設から職員への連絡が困難になるため、災害時に通勤可能か、また災害時の通勤所要時間等も考慮しつつ、職員が自動参集するよう予めルールを決め、周知しておく。一方、「参集しなくてよい状況」を明確に定め、職員を危険にさらしたり、参集すべきか板挟みで苦しませたりすることのないように配慮することも重要。時間ケアを行う必要がある入所施設は、災害が「日中に発生した場合」と「夜間に発生した場合」に分けて自動参集基準を定めるとよい。利用者の安否確認が速やかに行われるよう担当を決めておく。災害時の移動は原則「徒歩」であり、道路の陥没や橋梁の落下などにより、迂回ルートを取る必要性などから移動速度は「2.5 キロメートル毎時」が目安(平常時は4キロメートル毎時)。
(7)施設内外での避難場所・避難方法
地震などで一時的に避難する施設内・施設外の場所を記載する。また、津波や水害などにより浸水の危険性がある場合に備えて、垂直避難の方策について検討しておく。
【施設内】
被災時では順序正しく、整列して避難はできないことが想定され、やること(どこへ、どのように避難させる)、注意点(車いすの方など)を職員各自が理解した上で臨機応変に対応する必要がある。津波や水害の場合、他所へ避難する「水平避難」よりも、建物内の高所へ避難する「垂直避難」の方が安全性が高い場合がある。垂直避難を行う場合に備えて、場所・誘導方法を検討しておく。避難ルートは暗闇の中でも誘導できるか、転倒して通路をふさぐものがないか確認しておく。「垂直避難」を検討する場合、エレベーターが使用できないこともあることを想定する。
【施設外】
ハザードマップなどを確認し、河川の洪水浸水想定区域および土砂災害警戒区域に立地している場合は、避難確保計画を検討する。広域避難場所の場所や径路を確認し、実際に避難経路を辿ってみることも有用。(例えば、車いすに職員を乗せて避難経路を辿ることで、段差や階段などの障害物を事前に確認することができる)避難先でも最低限のケアを継続できるよう、手順や備蓄品を検討しておく。服薬の管理が必要な利用者については、薬の持ち出しを忘れないように検討しておく。水害の場合、行政などが出す避難情報を理解し、避難のタイミングを検討しておく。
【その他】
勤務者の少ない祝祭日や夜間、あるいは荒天などの不利な状況を想定して検討しておくことが望ましい。
いつ、どのような状態になれば避難を開始するか、基準を検討しておくことが望ましい。
(記載例)
【施設内】
第1 避難場所 第2 避難場所
避難場所 3 階 多目的ホール 2 階 談話室、廊下
避難方法 自力で避難できない利用者は●●を使用する。 同左
【施設外】
第1 避難場所 第2 避難場所
避難場所 ●●自治会館(広域避難場所) 高齢者施設○○
避難方法 送迎用車両にて避難。
早急な避難が必要な場合は、職員の通勤車両も活用。
自施設の送迎用車両又は受入施設
の送迎車両により避難。
(参考)
(8)重要業務の継続
「インフラ停止」「職員不足」「災害時に特有の業務の発生」などの理由から、災害時には業務量が増大することが考えられる。そのため、平常時の対応で選定した優先業務から特に重要な業務の継続方法を記載する。被災想定(ライフラインの有無)と職員の出勤と合わせて時系列で記載すると整理しやすい。被災時の厳しい状況でも、入所者・利用者の生命・健康を維持するために必ず実施しなければならない最低限の業務を「重要業務」として選定する。例えば、「食事・排泄・与薬」などが考えられるが、自施設の状況を踏まえて検討する必要がある。(医療依存度の高い利用者が多い施設・事業所では「医療的ケア」も重要業務に含まれる)参集可能な職員数では、重要業務の実施に必要な職員数をまかなうことができない場合は、重要業務の手順を見直したり、省力化に資する備蓄品を準備し代替方法を検討しておく。
(記載例)
経過目安夜間職員のみ発災後6 時間発災後1 日発災後3 日発災後7 日出勤率 出勤率3% 出勤率30% 出勤率50% 出勤率70% 出勤率90%在庫量 在庫100% 在庫90% 在庫70% 在庫20% 在庫正常ライフライン 停電、断水 停電、断水 停電、断水 断水 復旧業務基準職員・入所者の安全確認のみ安全と生命を守るための必要最低限食事、排泄中心その他は休止もしく減一部休止、減とするが、ほぼ通常に近づけるほぼ通常どおり給食 休止必要最低限のメニューの準備飲用水、栄養補助食品、簡易食品、炊き出し炊き出し光熱水復旧の範囲で調理再開炊き出し光熱水復旧の範囲で調理再開食事介助 休止応援体制が整うまでなし必要な利用者に介助必要な利用者に介助必要な利用者に介助必要な利用者に介助口腔ケア 休止応援体制が整うまでなし必要な利用者はうがい適宜介助 ほぼ通常どおり水分補給応援体制が整うまでなし飲用水準備必要な利用者に介助飲用水準備必要な利用者に介助飲用水準備必要な利用者に介助飲用水準備ほぼ通常どおり入浴介助失禁等ある利用者は清拭適宜清拭 適宜清拭 適宜清拭光熱水が復旧しだい入浴(出典)令和元年度社会福祉推進事業「社会福祉施設等におけるBCPの有用性に関する調査研究事業」
(提供)社会福祉法人 若竹会 非常災害等対策計画(一部抜粋)
(9)職員の管理
場合によっては、職員は極限の状況で業務を続けなければならないことが想定される。少しでも職員の負担が軽減できるよう職員の休憩・宿泊場所の確保や利用者向けだけではなく職員向けの備蓄を揃えるなど、職員に対する準備も重要。
①休憩・宿泊場所
震災発生後、職員が長期間帰宅できない状況も考えられるため、候補場所を検討し、指定しておく。通所事業所等を休止した場合はこれらも選択肢となる。
(記載例)
休憩場所 宿泊場所1階 会議室 別棟 集会所(10 人分)食堂 東端のスペース 2階 談話室(4人分)1階 応接室(3人分)1階 事務室の空きスペース(2人分)
②勤務シフト
震災発生後、職員が長期間帰宅できず、長時間勤務となる可能性がある。参集した職員の人数により、なるべく職員の体調および負担の軽減に配慮して勤務体制を組むよう、災害時の勤務シフト原則を検討しておく。
(記載例)
※新型コロナウイルス流行下においては、新型コロナウイルス感染、濃厚接触者となること等によりさらに職員の不足が見込まれる場合もあり得る。別途公表されている「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」も参照しつつ、施設内・法人内での人員確保、自治体・関係団体への応援職員の依頼など、職員の不足が見込まれる場合は、早めに対応を考えることが重要。
(10)復旧対応
復旧作業が円滑に進むように施設の破損個所確認シートや各種業者連絡先一覧を整備しておく。
①破損個所の確認
被害のあった箇所は写真を撮り、記録しておく。
建物・設備の保守管理業者、給食関係の業者など業務委託先や取引先の連絡先をリスト化しておく。
(記載例)建物・設備の被害点検シート例リーダー/サブ メンバー(近隣在住者) その他メンバーA班 ●●/●● ●●、●●、●●B班 ●●/●● ●●、●●、●● 出勤状況により割り振るC班 ●●/●● ●●、●●、●●対象 状況(いずれかに○) 対応事項/特記事項建物・設備躯体被害 重大/軽微/問題なしエレベーター 利用可能/利用不可電気 通電 / 不通水道 利用可能/利用不可電話 通話可能/通話不可インターネット 利用可能/利用不可・・・建物・設備(フロア単位)ガラス 破損・飛散/破損なしキャビネット 転倒あり/転倒なし天井 落下あり/被害なし床面 破損あり/被害なし壁面 破損あり/被害なし照明 破損・落下あり/被害なし・・・
②業者連絡先一覧の整備
医療機関やガソリンスタンド等は平常時から災害時における対応方法を取り決めておくことが望ましい。
各種協力業者の連絡先を一覧化したり、非常時の連絡先を確認しておくなど、円滑に復旧作業を依頼できるよう準備しておく。
③情報発信
(関係機関、地域、マスコミ等への説明・公表・取材対応)
公表のタイミング、範囲、内容、方法についてあらかじめ方針を定めておく。
風評被害を招く恐れもあるため、丁寧な対応や説明が必要となる。
4.他施設との連携
近隣の法人と協力関係を構築する、所属している団体を通じて協力関係を整備する、自治体を通じて地域での協力体制を構築する等、平常時から他施設・他法人と協力関係を築くことが大切。また、単に協定書を結ぶだけではなく、普段から良好な関係を作るよう工夫することも大切。
(1)連携体制の構築
①連携先との協議
連携先と連携内容を協議中であれば、それら協議内容や今後の計画などを記載する。
<主な項目>
先方施設・事業所名、種別、所在地などこれまでの協議の経緯決定している事項今後検討すべき事項今後のスケジュール など②連携協定書の締結
地域との連携に関する協議が整えば、その証として連携協定書を締結し、写しを添付する。
<主な項目>
連携の目的
入所者・利用者の相互受入要領
人的支援(職員の施設間派遣など)
物的支援(不足物資の援助・搬送など)
費用負担 など
③地域のネットワーク等の構築・参画
施設・事業所の倒壊や多数の職員の被災等、単独での事業継続が困難な事態を想定して、施設・事業所を取り巻く関係各位と協力関係を日ごろから構築しておく。地域で相互に支援しあうネットワークが構築されている場合は、それらに加入することを検討する。
<主な提携先>
連携関係のある施設・法人
連携関係のある医療機関(協力医療機関等)
連携関係のある社協・行政・自治会 等
(2)連携対応
①事前準備
連携協定に基づき、被災時に相互に連携し支援しあえるように検討した事項や今後準備すべき事項などを記載する。
相手を支援する観点だけではなく、支援を受ける立場となって、どうすれば円滑に相手から支援を受けられるか、検討、準備を行うことも重要である。
<主な記載項目>
・被災時の連絡先、連絡方法
・備蓄の拡充
・職員派遣の方法
・入所者・利用者受入方法、受入スペースの確保
・相互交流 など
②入所者・利用者情報の整理
避難先施設でも適切なケアを受けることができるよう、最低限必要な利用者情報を「利用者カード」などに、あらかじめまとめておく。
避難先の施設・事業所に入所者・利用者を預ける場合、必ずしも担当の職員も同行できるとは限らない。入所者・利用者の情報がなければ受入先の施設・事業所でもケアの提供に支障をきたす恐れがある。そのため避難時に備えて入所者・利用者情報を記載したカード等を作成しておき、入所者・利用者とともに預ければ、これらリスクを低減できる。
③共同訓練
連携先と共同で行う訓練概要について記載する。
地域の方と共同で防災訓練に取り組むことにより、施設の実情を地域の方にご理解をいただくことにつながるため、一過性で終わることなく継続的に取り組むことが望ましい。
津波で浸水することが想定される施設では、地域の方に津波避難所として施設を開放するかわりに、地域の方に利用者を上階へ搬送するよう支援してもらう計画を策定し、日常から地域の方とともに訓練している事例もある。
5.地域との連携
(1)被災時の職員の派遣(災害福祉支援ネットワークへの参画や災害派遣福祉チームへの職員登録)
「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」では、都道府県は、一般避難所で災害時要配慮者に対する福祉支援を行う災害派遣福祉チームを組成することが求められており、それらが円滑に実施されるよう都道府県、社会福祉協議会や社会福祉施設等関係団体などの官民協働による「災害福祉支援ネットワーク」を構築するよう示されている。
社会福祉施設等は災害派遣福祉チームにチーム員として職員を登録するとともに、事務局への協力、災害時に災害派遣福祉チームのチーム員の派遣を通じた支援活動等を積極的に行うことが期待されている。地域の災害福祉支援ネットワークの協議内容等について確認し、災害派遣福祉チームのチーム員としての登録を検討する。
(2) 福祉避難所の運営
①福祉避難所の指定
福祉避難所の指定を受けた場合は、自治体との協定書を添付するとともに、受入可能人数、受入場所、受入期間、受入条件など諸条件を整理して記載する。社会福祉施設の公共性を鑑みれば、可能な限り福祉避難所の指定を受けることが望ましいが、仮に指定を受けない場合でも被災時に外部から要援護者や近隣住民等の受入の要望に沿うことができるよう、上記のとおり諸条件を整理しておく。
②福祉避難所開設の事前準備
福祉避難所として運営できるように事前に必要な物資の確保や施設整備などを進める。また、受入にあたっては支援人材の確保が重要であり、自施設の職員だけでなく、専門人材の支援が受けられるよう社会福祉協議会などの関係団体や支援団体等と支援体制について協議し、ボランティアの受入方針等について検討しておく。
<主な準備事項例>
受入に必要な備蓄類を洗い出し整備する。
資機材についてはレンタルを活用することも検討する。
支援人材確保に向けた連携や受入方針を検討する。
事務手続き等について市町村の窓口に確認しておく。
(参照)福祉避難所の確保・運営ガイドライン 内閣府(防災担当)
3-2-2.自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(通所サービス固有事項)
3-2-1で記載した共通事項のほか、通所サービス固有の事項として留意する点は、以下のとおり。
【平時からの対応】
サービス提供中に被災した場合に備え、緊急連絡先の把握にあたっては、複数の連絡先や連絡手段(固定電話、携帯電話、メール等)を把握しておくことが望ましい。
居宅介護支援事業所と連携し、利用者への安否確認の方法等をあらかじめ整理しておく。
平常時から地域の避難方法や避難所に関する情報に留意し、地域の関係機関(行政、自治会、職能・事業所団体等)と良好な関係を作るよう工夫することも望まれる。
【災害が予想される場合の対応】
台風などで甚大な被害が予想される場合などにおいては、サービスの休止・縮小を余儀なくされることを想定し、あらかじめその基準を定めておくとともに、居宅介護支援事業所にも情報共有の上、利用者やその家族にも説明する。
その上で、必要に応じ、サービスの前倒し等も検討する。
【災害発生時の対応】
サービス提供を長期間休止する場合は、居宅介護支援事業所と連携し、必要に応じて他事業所の訪問サービス等への変更を検討する。
利用中に被災した場合は、利用者の安否確認後、あらかじめ把握している緊急連絡先を活用し、利用者家族への安否状況の連絡を行う。利用者の安全確保や家族への連絡状況を踏まえ、順次利用者の帰宅を支援する。その際、送迎車の利用が困難な場合も考慮して、手段を検討する。帰宅にあたって、可能であれば利用者家族の協力も得る。関係機関とも連携しながら事業所での宿泊や近くの避難所への移送等で対応する。
3-2-3.自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(訪問サービス固有事項)
3-2-1で記載した共通事項のほか、訪問サービス固有の事項として留意する点は、以下のとおり。
【平時からの対応】
サービス提供中に被災した場合に備え、緊急連絡先の把握にあたっては、複数の連絡先や連絡手段(固定電話、携帯電話、メール等)を把握しておくことが望ましい。
居宅介護支援事業所と連携し、利用者への安否確認の方法等をあらかじめ検討しておく。
発災時に、職員は利用者宅を訪問中または移動中であることも想定し、対応中の利用者への支援手順や、移動中の場合における対応方法をあらかじめ検討しておく。
避難先においてサービスを提供することも想定され、平常時から地域の避難方法や避難所に関する情報に留意し、地域の関係機関(行政、自治会、職能・事業所団体等)と良好な関係を作るよう工夫することも望まれる。
【災害が予想される場合の対応】
台風などで甚大な被害が予想される場合などにおいては、サービスの休止・縮小を余儀なくされることを想定し、あらかじめその基準を定めておくとともに、居宅介護支援事業所にも情報共有の上、利用者やその家族にも説明する。その上で、必要に応じ、サービスの前倒し等も検討する。
【災害発生時の対応】
サービス提供を長期間休止する場合は、居宅介護支援事業所と連携し、必要に応じて他事業所の訪問サービス等への変更を検討する。あらかじめ検討した対応方法に基づき、利用者への安否確認等や、利用者宅を訪問中または移動中の場合の対応を行う。居宅介護支援事業所や地域の関係機関と連携の上、可能な場合には、避難先においてサービスを提供する。
3-2-4.自然災害発生に備えた対応・発生時の対応(居宅介護支援サービス固有事項)
3-2-1で記載した共通事項のほか、居宅介護支援サービス固有の事項として留意する点は、以下のとおり。
【平時からの対応】
災害発生時、優先的に安否確認が必要な利用者について、あらかじめ検討の上、利用者台帳等において、その情報がわかるようにしておくこと。緊急連絡先の把握にあたっては、複数の連絡先や連絡手段(固定電話、携帯電話、メール等)を把握しておくことが望ましい。平常時から地域の避難方法や避難所に関する情報に留意し、地域の関係機関(行政、自治会、職能・事業所団体等)と良好な関係を構築する。その上で、災害に伴い発生する、安否確認やサービス調整等の業務に適切に対応できるよう、他の居宅介護支援事業所、居宅サービス事業所、地域の関係機関と事前に検討・調整する。なお、避難先において、薬情報が参照できるよう、利用者に対し、おくすり手帳の持参指導を行うことが望ましい。【災害が予想される場合の対応】訪問サービスや通所サービスについて、「台風などで甚大な被害が予想される場合などにおいては、サービスの休止・縮小を余儀なくされることを想定し、あらかじめその基準を定めておく」とされており、利用者が利用する各事業所が定める基準について、事前に情報共有し、把握しておくこと。その上で、必要に応じ、サービスの前倒し等も検討する。また、自サービスについても、台風などで甚大な被害が予想される場合などにおいては、休止・縮小を余儀なくされることを想定し、その際の対応方法を定めておくとともに、他の居宅介護支援事業所、居宅サービス事業所、地域の関係機関に共有の上、利用者やその家族にも説明する。
【災害発生時の対応】
災害発生時で、事業が継続できる場合には、可能な範囲で、個別訪問等による早期の状態把握を通じ、居宅サービスの実施状況の把握を行い、被災生活により状態の悪化が懸念される利用者に対して、必要な支援が提供されるよう、居宅サービス事業所、地域の関係機関との連絡調整等を行う。(例)通所・訪問サービスについて、利用者が利用している事業所が、サービス提供を長期間休止する場合は、必要に応じて他事業所の通所サービスや、訪問サービス等への変更を検討する。また、避難先においてサービス提供が必要な場合も想定され、居宅サービス事業所、地域の関係機関と連携しながら、利用者の状況に応じて、必要なサービスが提供されるよう調整を行う。災害発生時で事業が継続できない場合には、他の居宅介護支援事業所、居宅サービス事業所、地域の関係機関と事前に検討・調整した対応を行う。
※ 参考資料 災害対応マニュアル【第4版】(令和元年12 月1 日)((一社)日本介護支援専門員協会)
(参考:複合災害対策~新型コロナウイルス感染症流行下における自然災害発生時の対策の考え方~)
新型コロナウイルス感染症の流行下において自然災害(地震、風水害等)が発生した場合、感染拡大防止に配慮しながら、初動対応や事業継続、復旧対応が求められます。
■地震+感染症の場合における再検討事項
地震は事前の予測ができない→従って、初動対応が混乱し3 密が発生しやすい地震災害は突発的に発生するため、発生までの事前準備は困難です。被害想定の再設定を行い、特に混乱する初動対応時の感染防止について十分な検討が必要です。また、帰宅職員や避難者の受入れ等の一時滞在場所の感染症対策について、場所、備品、換気対策の観点で再検討が必要です。緊急時の各対応事項に関する検討事項の例は下記のとおりです。検討項目 検討事項対策本部設置 参集場所の分散、参集方法設備・建物損傷 対応人数の制限、衛生備品の備蓄確認ケガ人発生 飛沫防止用対策、密にならない十分な広さの一時救護所の設置避難者滞在場所 換気対策、十分な空間確保、衛生備品利用者対応 連絡対応、モバイル端末、テレワーク機器の活用
■水害+感染症の場合における再検討事項
水害は事前に予測が可能→緊急対策の開始と共に最小人数での対応を想定
水害はピーク時期を事前に予想できるため、大切なことは緊急対策を始める判断基準です。この判断直後から最小の人数で
初動対応およびサービス継続対応を行う計画を再検討します。また、施設内宿泊等が可能な職員について、被害発生前に参
集可能な職員の把握や優先業務の見直し等の判断基準の設定が重要です。緊急時の各対応事項に関する検討事項の例は
下記のとおりです。
検討項目 検討事項浸水防止対策 損害防止対策、利用者の垂直避難、衛生備品の移動、参集可能人数対策本部設置 参集場所の分散、参集方法設備・建物損傷 参集可能人数の把握、衛生備品(防護服・フェイスガード)の配備避難者滞在場所 換気対策、十分な空間確保、衛生備品災害廃棄物処理 一時保管場所の確保、感染可能性のある廃棄物処理方法感染拡大防止対策を講じながらの災害対策においては、新たに想定しなければいけない課題もあり、自然災害発生時及び新型コロナウイルス感染症発生時それぞれの対応に加えて、次の点に留意する必要があります。
■職員数の不足
新型コロナウイルス感染症の発生下においては、施設・事業所の職員が感染(疑い)者や濃厚接触者となった場合、入院や自宅待機等により出勤できない場合がありますが、それに加えて、自然災害により職員が被災したり、負傷したりすることで、さらに職員が不足することが想定されます。一方、自然災害による被害状況によっては、特に近隣からの職員の応援が困難になることやボランティア等の不足も想定されます。なお、感染症の発生下におけるボランティアの受入については、感染防止対策にも留意が必要です。
■建物や設備の損傷
自然災害により、施設・事業所の建物や設備が損傷し、全部または一部が使用できなくなるおそれがあります。入所者・利用者が、施設・事業所外に避難する場合にあっては、感染拡大防止の観点から分散して避難することも想定されます。また、損傷が一部にとどまった場合でも、使用可能なスペースの中で、感染拡大防止に配慮した避難場所の確保やゾーニングの実施を行うことも想定されます。
■物資の調達
自然災害による被害状況によっては、製造・流通への影響や復旧作業の遅れにより、必要な物資の確保がさらに困難になることが想定されます。
■福祉避難所の開設(入所系)
自治体から福祉避難所の指定を受けている場合でも、職員や入所者の感染状況によっては、避難所を開設しない(できない)ことも想定されます。
また、避難所を開設し、避難者を受け入れる場合は、感染防止対策に配慮した受入体制(受入人数、受入場所、受入手順、対応者等)を整える必要があることにも留意が必要です。
厚生労働省 「介護サービス類型に応じた業務継続計画(BCP)作成支援業務一式」
検討委員会
委員名簿
< 委 員 > (敬称略・五十音順、◎:委員長)
江 澤 和 彦 公益社団法人日本医師会 常任理事
菊 池 俊 則 全国社会福祉法人経営者協議会 中央推薦協議員
社会福祉法人 若竹会 常務理事
種 岡 養 一 公益社団法人全国老人福祉施設協議会 災害対策委員会委員長
早 見 浩太郎 一般社団法人日本在宅介護協会(株式会社ツクイ)
介護保険制度委員会 委員
樋 口 丈 明 一般社団法人「民間事業者の質を高める」
全国介護事業者協議会 関東甲信越ブロック担当理事
◎ 本 田 茂 樹 信州大学 特任教授
ミネルヴァベリタス株式会社 顧問
山 野 雅 弘 公益社団法人全国老人保健施設協会 管理運営委員会副委員長